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Hemu Kafle

Nature ダイジェスト Vol. 19 No. 11 | doi : 10.1038/ndigest.2022.221148

原文:Nature (2022-07-12) | doi: 10.1038/d41586-022-01902-w | We built a science institute from scratch

Bianca Nogrady

Hemu Kafleは、カトマンズ応用科学研究所(ネパール)の環境科学者。

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Nature by MONIKA DEUPALA

写真は、私たちが設立したカトマンズ応用科学研究所(ネパール)で設計・開発した、低コスト気象観測システムです。3年前に最初の試作機を作り、今は4台目です。温度、湿度、気圧、風速、風向、降水量を観測しています。

私は昔、祖父からネパールの干ばつの話を聞いていました。ネパール語で干ばつは「khadērī」と言います。ところがネパールの干ばつについて研究しようとすると、ほとんど情報がありませんでした。ネパールの人々は、洪水や地滑りなどの目に見える災害のことは話題にしますが、干ばつを話題にすることはありません。けれども干ばつは農作物の生産に大きな影響を与える恐れがあります。中でも心配なのは、灌漑(かんがい)設備を使用せずに雨水に頼る天水農業への影響です。

ネパールには気象観測所がほとんどありません。山がちな地形ですから、ちょっと行って観測機器を較正してくる、というわけにはいかず、気象データの多くに欠けがあります。私は日本の名古屋大学(愛知県)でリモートセンシングの博士号を取得しました。そして、衛星データを利用して欠けているデータを補い、ネパールの干ばつの全体像を明らかにしたいと考えました。そのためにはモデル作成用のコンピューターが必要ですが、当時所属していた研究所はコンピューターを支給してくれませんでした。

私は諦めませんでした。外国で勉強してきて、自国に特有の問題を研究したいと願っているネパール人研究者は、私だけではなかったからです。私たちはミーティングを重ね、2015年にこの研究所を設立しました。今は、野生動物保護、極端な気候条件、環境汚染に関する研究を支援しています。

まだ設立から7年ですが、外国からの助成金のおかげで、とても良い研究所になりました。私はパソコンを入手し、ネパールだけでなく、インド、バングラデシュ、パキスタンの一部についても干ばつの分析を行いました。

発展途上国には、現地で行う必要のある研究がたくさんあります。若い研究者も育てたいと思っています。ネパールが発展途上国から先進国になるためには、科学者や先見の明のある人材がもっと必要ですから。

(翻訳:三枝小夜子)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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