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ビタミンK再利用の新たなメディエーターの発見

ヒト血中で形成された血栓の電子顕微鏡写真
血栓治療に有効なワルファリンであるが、過量投与や中毒時には血液凝固不全を起こしてしまう。その際にはビタミンKを投与して血液凝固を是正させるが、作用機序は不明だった。三島らは、フェロトーシス関連のFSP1というレダクターゼが、ワルファリンに阻害されずにビタミンKを還元し、血液凝固を是正する効果があることを示した。 Credit: MICRO DISCOVERY/CORBIS DOCUMENTARY/GETTY

ビタミンKは1936年に生化学者ヘンリク・ダムによって発見された。血液凝固を促進する役割があることから、ダムの母国語のデンマーク語で血液凝固を意味する「koagulation」の頭文字を取って名付けられた1。ビタミンKはナフトキノンと呼ばれるタイプの分子で、複数の分子形態で存在し得るが、凝固作用に加担しているのはVKH2として知られる「還元されたヒドロキノン型」のみである。体内のVKH2レベルは、主な(カノニカルな)ビタミンK再利用経路の一部であるビタミンKエポキシドレダクターゼ(VKOR)という酵素によって維持される。このほど、東北大学大学院医学系研究科に所属する〔現 ヘルムホルツセンターミュンヘン(ドイツ・ノイヘルベルク)所属〕三島英換(みしま・えいかん)ら2は、ビタミンK再利用の別の重要な経路において役割を担う、VKORとは異なるレダクターゼを特定したことをNature 2022年8月25日号778ページで報告している。

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翻訳:三谷祐貴子

Nature ダイジェスト Vol. 19 No. 11

DOI: 10.1038/ndigest.2022.221142

原文

Long-sought mediator of vitamin K recycling discovered
  • Nature (2022-08-25) | DOI: 10.1038/d41586-022-02001-6
  • Nathan P. Ward & Gina M. DeNicola
  • Nathan P. WardとGina M. DeNicolaは共にモフィットがんセンター(米国フロリダ州タンパ)に所属。

参考文献

  1. Dam, H. & Schønheyder, F. Biochem. J. 30, 897–901 (1936).
  2. Mishima, E. et al. Nature 608, 778–783 (2022).
  3. Chiquette, E., Amato, M. G. & Bussey, H. I. Arch. Intern. Med. 158, 1641–1647 (1998).
  4. Doll, S. et al. Nature 575, 693–698 (2019).
  5. Barton, A. R., Sherman, M. A., Mukamel, R. E. & Loh, P.-R. Nature Genet. 53, 1260–1269 (2021).
  6. Ahola-Olli, A. V. et al. Am. J. Hum. Genet. 100, 40–50 (2017).
  7. Lurie, Y., Loebstein, R., Kurnik, D., Almog, S. & Halkin, H. Br. J. Clin. Pharmacol. 70, 164–170 (2010).
  8. Ilbert, M. & Bonnefoy, V. Biochim. Biophys. Acta 1827, 161–175 (2013).
  9. Jiang, X., Stockwell, B. R. & Conrad, M. Nature Rev. Mol. Cell Biol. 22, 266–282 (2021).