長寿命の卵細胞の自己防衛戦略
卵巣内の初期段階の卵母細胞
ヒトをはじめ哺乳類の雌は、卵母細胞が前顆粒膜細胞に囲まれた原始卵胞という、休眠した未成熟な卵を抱えて生まれてくる。母体が性成熟すると、原始卵胞は徐々に活性化し、いくつかの段階を経て成熟した卵胞となり排卵に至る。卵巣の中では、全ての卵胞が同調しているわけではなく、さまざまな発育段階の卵胞が混在している。図の左に位置する円形のものが原始卵胞、真ん中の少し大きい3つは原始卵胞が発育した一次卵胞、右の大きな卵胞腔(白い部分)を持つものが排卵前の成熟した卵胞(グラーフ卵胞)。 Credit: Ed Reschke/Stone/Getty
哺乳類の雌は、限られた数の未成熟卵を備えた状態で生まれるという、リスクの高い進化戦略をとっているようだ。これらの卵は、健康な子を産み続けられるように、個体の生殖寿命が尽きるまで、つまりヒトの場合は40年以上、有害な影響を回避できなければならない。このほどゲノム制御センター(スペイン・バルセロナ)のAida Rodríguez-Nuevoら1は、どのようにして卵母細胞が長い間安全に保たれているのかを説明し得る適応を見いだし、さらにこの適応が卵母細胞のエネルギー産生の仕組みに関連していることを明らかにして、Nature 2022年7月28日号756ページで報告している。
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翻訳:三谷祐貴子
Nature ダイジェスト Vol. 19 No. 10
DOI: 10.1038/ndigest.2022.221036
原文
Eggs remodel energy production to protect themselves from harm- Nature (2022-07-28) | DOI: 10.1038/d41586-022-01642-x
- Deepak Adhikari & John Carroll
- Deepak Adhikari、John Carrollは共にモナッシュ大学(オーストラリア・メルボルン)に所属。
参考文献
- Rodríguez-Nuevo, A. et al. Nature 607, 756–761 (2022).
- Raven, J. A. & Beardall, J. J. Exp. Bot. 68, 2683–2692 (2017).
- Senkler, J., Rugen, N., Eubel, H., Hegermann, J. & Braun, H.-P. Curr. Biol. 28, 1606–1613 (2018).
- Grivennikova, V. G. & Vinogradov, A. D. Biochim. Biophys. Acta 1757, 553–561 (2006).
- Eppig, J. J. J. Exp. Zool. 198, 375–381 (1976).
- Brand, M. D. Exp. Gerontol. 45, 466–472 (2010).
- Pasquariello, R. et al. Biol. Reprod. 100, 971–981 (2019).
- Miwa, S. et al. Nature Commun. 5, 3837 (2014).
- Al-Zubaidi, U. et al. Hum. Reprod. 36, 771–784 (2021).
- Sasaki, H. et al. Front. Endocrinol. 10, 811 (2019).
- Ben-Meir, A. et al. Aging Cell 14, 887–895 (2015).
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