News & Views

鉄–硫黄クラスター錯体の鉄原子が窒素を還元

Nature ダイジェスト Vol. 19 No. 10 | doi : 10.1038/ndigest.2022.221033

原文:Nature (2022-07-07) | doi: 10.1038/d41586-022-01787-9 | Synthetic molecular cluster hints at mechanism of nitrogen fixation

Daniël L. J. Broere

窒素分子を生物が利用可能な形態へと「固定」する酵素は、活性部位に鉄原子と硫黄原子を含む特異なクラスターを持つ。今回、このクラスターを模倣した人工分子で窒素の還元反応が実現され、窒素固定の反応機構に光が当てられた。

マメ科植物の根に見られる根粒 窒素固定を行う微生物の代表である根粒菌は、植物の根に「根粒」と呼ばれる果粒状の構造を形成し、この中でニトロゲナーゼを用いて大気中の窒素を固定する。 | 拡大する

BILL BARKSDALE/DESIGN PICS/GETTY

窒素(N)は既知の全ての生物にとって不可欠な元素だが、その大部分は、最も反応性の低い窒素分子(N2)の形態で大気中に存在する。この安定なN2を生物が利用できる形態へと化学的に変換する「窒素固定」は、非常に難しい反応として知られており、自然界では、雷の放電で起こる他、ジアゾ栄養生物と呼ばれる一部の微生物(細菌やアーキア)によって行われるのみである1。これまでの研究で、こうした微生物が、鉄(Fe)原子を含む立方体型分子が2つ連結した特異なクラスターを用いて窒素固定(N2還元反応)を行うことは解明されているものの、N2がこのクラスターのどこにどのように結合し、還元反応がどのように進むかは正確には分かっていなかった。このたび、京都大学の大木靖弘(おおき・やすひろ)ら2は、微生物のクラスターを模倣した人工の立方体型分子を合成して、この分子内のFe原子が実際にN2を捕捉して類似の還元反応を触媒できることを実証し、Nature 2022年7月7日号86ページで報告した。この成果は、自然界が窒素固定を行うのに用いている分子装置について、重要な手掛かりをもたらしている。

全文を読むには購読する必要があります。既に購読されている方は下記よりログインしてください。

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

プライバシーマーク制度