Where I Work

Brother Guy Consolmagno

Credit: Nature by FRANCESCO PISTILLI

私は多くの時間を上を向いて過ごします。ここローマ郊外のカステル・ガンドルフォでのぞき込んでいるのは、バチカン天文台の、1891年製の由緒ある望遠鏡です。ローマは光害がひどいので気晴らしや訪問者向けですが、月や土星の環など、夜空を彩る主な天体は見ることができます。遠からぬうちに、再び皆さんをお迎えできるようになることを願っています。

バチカン天文台は本格的な研究も行っています。米国アリゾナ州のグレアム山に1.8mの研究用望遠鏡を所有・運用しており、私はこれを使って、海王星よりも外側の軌道を回る太陽系外縁天体の研究をしています。私は、ハーバード大学天文台とマサチューセッツ工科大学(どちらも米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)、そしてラファイエット大学(米国ペンシルベニア州イーストン)の研究者として、20年にわたって世界各地で回収された隕石の特性を研究してきました。その試料の多くは、現在バチカンにあります。

私は普段はTシャツで仕事をしていますが、写真撮影があるときには必ずイエズス会の修道服を着ます。1991年に修道誓願を立てました。バチカン天文台の存在は、教会が科学を尊重していることを世界に示すものです。科学機器の横に修道士がいることで、そのメッセージを伝えることができます。

バチカン天文台に所属する12人の天文学者の全員が、聖職者か、私のようなイエズス会士ですが、カトリック教徒でなくても施設を利用することができます。私たちは、さまざまなバックグラウンドを持つ天文学者や大学院生と共同研究を行っています。バチカン天文台が関係する論文に名前を連ねている現役の科学者は、100人前後います。

私は2015年にフランシスコ教皇によって天文台長に任命されました。米国ミシガン州デトロイト生まれのカトリック教徒にとって、この上ない名誉です。フランシスコ教皇は天文学にそれほど強い関心を持っておられるわけではありませんが、ピウス12世(在位1939~1958年)は本物の愛好家だったそうです。ヨハネ23世(在位1958~1963年)は、恒星や惑星に関する知識はほとんどなくても、天文台にワインを持ってこられて、天文学者の仕事ぶりをご覧になっていたそうです。

木星の衛星や遠くの銀河を見ると喜びを感じます。私にとって、その喜びは神の存在そのものです。

翻訳:三枝小夜子

Nature ダイジェスト Vol. 19 No. 1

DOI: 10.1038/ndigest.2022.220156

原文

Serving science and the Church as the Pope’s astronomer
  • Nature (2021-10-11) | DOI: 10.1038/d41586-021-02761-7
  • CHRIS WOOLSTON