夜間絶食によって寿命が延びる可能性
タイミングは、喜劇や人生における成功の秘訣であると言われているが、健康長寿の秘訣の1つでもあるかもしれない。ヒトにおける研究ではこれまで、カロリー摂取量を操作することで健康寿命を延ばすことができる可能性が示されている1,2(2016年1月号「老化を制御し、予防する」、2018年6月号「カロリー制限による老化減速をヒトでも確認」参照)。しかし、強烈な空腹感は多くの人にとって耐え難く、カロリー制限は短期間ならばともかく、継続的に行うことは困難である。一方、摂取するカロリー量ではなく、摂取のタイミングに焦点を合わせて操作することは、はるかに継続可能であるかもしれない。この方法には、時間制限摂餌(TRF)などがある。このほどコロンビア大学医学系大学院(米国ニューヨーク)のMatt Ulgheraitら3は、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)では、長時間の夜間絶食を含んだTRFスケジュールで健康寿命が延びたことをNature 2021年10月14日号353ページで報告している。この結果は、オートファジー(細胞内での分解およびリサイクルの過程)の働きによるものと考えられ、オートファジーは特に夜間に促進される4,5ことが知られている。
全文を読むには購読する必要があります。既に購読されている方は下記よりログインしてください。
本サービスでは、サイトご利用時の利便性を向上させるためにCookiesを使用しています。詳しくは、シュプリンガーネイチャー・ジャパン株式会社の「プライバシー規約」をご覧下さい。
翻訳:三谷祐貴子
Nature ダイジェスト Vol. 19 No. 1
DOI: 10.1038/ndigest.2022.220146
原文
Evidence that overnight fasting could extend healthy lifespan- Nature (2021-10-14) | DOI: 10.1038/d41586-021-01578-8
- Stephen L. Helfand & Rafael de Cabo
- S. L. Helfandはブラウン大学(米国ロードアイランド州プロビデンス)、R. de CaboはNIH国立老化研究所(米国メリーランド州ボルティモア)に所属。
参考文献
- de Cabo, R. & Mattson, M. P. N. Engl. J. Med. 381, 2541–2551 (2019).
- Mattson, M. P. et al. Proc. Natl Acad. Sci. USA 111, 16647–16653 (2014).
- Ulgherait, M. et al. Nature 598, 353–358 (2021).
- Hansen, M., Rubinsztein, D. C. & Walker, D. W. Nature Rev. Mol. Cell Biol. 19, 579–593 (2018).
- Kaushik, S. & Cuervo, A. M. Nature Med. 21, 1406–1415 (2015).
- Longo, V. D. & Panda, S. Cell Metab. 23, 1048–1059 (2016).
- Mattison, J. A. et al. Nature Commun. 8, 14063 (2017).
- Sutton, E. F. et al. Cell Metab. 27, 1212–1221 (2018).
- Mitchell, S. J. et al. Cell Metab. 29, 221–228 (2019).
- Finkel, T. Nature Med. 21, 1416–1423 (2015).
- Xu, K., Zheng, X. & Sehgal, A. Cell Metab. 8, 289–300 (2008).
- Stekovic, S. et al. Cell Metab. 30, 462–476 (2019).