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さらに深まった中性子寿命の謎

UCNτ実験で使われた、重力と磁場で中性子を閉じ込める容器の内部。容器は深さ50cmのゆがんだお椀形(上部は開いている)で、多数の永久磁石を並べてできている。ロスアラモス国立研究所提供。 Credit: Los Alamos National Laboratory

中性子が崩壊するまでの時間(寿命)のこれまでで最も精度の高い測定結果が2021年10月に公表され、877.75秒と報告された。この結果は、超低速の中性子を重力と磁場で閉じ込める方法で測定され、精度はこれまでの同種の測定の約2倍だ。しかし、全く別の方法による測定では、中性子の寿命は10秒近く長いという結果が以前から得られている。中性子の寿命は、ビッグバン元素合成の予測などにも影響する重要な値だが、今回の結果で測定値の不一致がさらに明確になり、謎は深まっている。

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翻訳:新庄直樹

Nature ダイジェスト Vol. 19 No. 1

DOI: 10.1038/ndigest.2022.220108

原文

Physicists make most precise measurement ever of neutron’s lifetime
  • Nature (2021-10-15) | DOI: 10.1038/d41586-021-02812-z
  • Davide Castelvecchi

参考文献

  1. Gonzalez, F. M. et al. Phys. Rev. Lett. 127, 162501 (2021).
  2. Yue, A. T. et al. Phys. Rev. Lett. 111, 222501 (2013).
  3. Serebrov, A. et al. Physics Letters B 605, 72 (2005).
  4. Wilson, J. T. et al. Phys. Rev. C 104, 045501 (2021).