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除虫菊の秘密

Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 9 | doi : 10.1038/ndigest.2021.210914a

天然の蚊除け剤が働く仕組みが判明。

シロバナムシヨケギク(除虫菊;Tanacetum cinerariifolium)には強い防虫効果がある。 | 拡大する

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蚊が媒介する病気によって世界で毎年約70万人が死亡しているが、忌避剤(虫除け)を使えば命を救うことができる。人類は何千年も前から、除虫菊を虫除けに使ってきた。除虫菊が防虫効果を発揮するメカニズムが最近の研究でついに解明され、Nature Communications に報告された。除虫菊に含まれる2種類の成分が相乗的に作用して、厄介な吸血者を阻止していることが分かった。

この論文の責任著者であるデューク大学(米国)の神経毒性学者Ke Dongは、蚊は1種類の忌避剤に長い間さらされていると耐性を獲得すると指摘する。このため「現在使われている忌避剤にいずれは代わる新しいものを常に開発していく必要があります」と言う。防虫のメカニズムを解明すればそれに役立つだろう。「世界中で使われている天然の忌避剤が蚊を防ぐメカニズムを、私たちはついに理解し始めているのです」。

嗅覚受容体Or31

Dongらは除虫菊の効果を観察するため、蚊の触角の毛に微小な電極を取り付けた。この電極によって、忌避剤に対する蚊の反応を、神経細胞にある嗅覚受容体のレベルで測定できるようになる。病気を媒介する蚊の多くはこうした受容体を100種類以上持っているが、研究チームは除虫菊がOr31という特定の受容体を活性化することを突き止めた。そして、遺伝子操作によってこの受容体をなくした蚊が除虫菊を避けなくなることを確かめた。

Or31は他の多くの嗅覚受容体と異なり、病気を媒介する既知の蚊全ての種に存在しているとDongは言う。加えて、除虫菊以外の自然の忌避剤の多くは複数の嗅覚受容体を活性化することによって効果を発揮しており、それらの受容体の働きはまだほとんど分かっていない。こうした点を考慮すると、より良い忌避剤を開発するにはOr31を標的とするのが明らかに良い戦略だろうと研究チームはみている。

EBFとピレトリン

研究チームはまた、除虫菊が含む2種類の化合物、EBFとピレトリンがどのように忌避反応を引き起こすのかを、化学分析によって調べた。実際の蚊を用いた実験から、これら2つの化学物質が組み合わさった場合に、最も有効に働くことが分かった。EBFはOr31を活性化し、一方のピレトリンは神経シグナル伝達を強めることによって忌避効果を高めている。

(翻訳協力:粟木瑞穂)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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