古代人の糞便とその腸内微生物
ヒトの腸に生息する微生物は、腸内微生物相または腸内マイクロバイオームと総称され、ヒトの代謝や免疫系の生物学的挙動に大きな影響を与える1,2。微生物の多くは世代を超えて受け継がれている3,4。しかし、腸内マイクロバイオーム(糞便中の微生物DNAの解析によって追跡される)は、外国への移住5や抗生物質による治療6など、特定の出来事によって数日〜数カ月で劇的に変容することがある。かつてはヒトの進化史の一部だったのに今では失われてしまった微生物を明らかにすることで、微生物とヒトの健康との関係を解明するためのカギが得られる可能性がある。この問題に取り組むため、ジョスリン糖尿病センターおよびハーバード大学医学系大学院(共に米国マサチューセッツ州ボストン)のMarsha C. Wibowoら7は、微生物の「タイムマシン」である古糞便(palaeofaeces)に注目し、その成果をNature 2021年6月10日号の234ページで報告している。彼らは、2000~1000年前のヒト糞便試料のDNA塩基配列を解読してマイクロバイオームを調べ、工業化以前の時代の腸内微生物に関する貴重な知見を得た。
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翻訳:小林盛方
Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 9
DOI: 10.1038/ndigest.2021.210940
原文
Ancient human faeces reveal gut microbes of the past- Nature (2021-06-10) | DOI: 10.1038/d41586-021-01266-7
- Matthew R. Olm & Justin L. Sonnenburg
- Matthew R. Olm & Justin L. Sonnenburgは、共にスタンフォード大学医学系大学院(米国)に所属。
参考文献
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- Karlsson, F., Tremaroli, V., Nielsen, J. & Bäckhed, F. Diabetes 62, 3341–3349 (2013).
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