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ミューオン磁気モーメントの新たな理論計算と標準模型

空から見たフェルミ国立加速器研究所(米国イリノイ州バタビア)。ここでミューオンのg-2を測定する実験が行われている。 Credit: NNehring/E+/Getty

標準模型は、素粒子物理学の確立された理論であり、莫大な数の実験的検証に合格してきた。しかし、そうしたテストの1つ、ミューオン(ミュー粒子)という素粒子の磁気モーメント(磁気能率)の決定に関しては、長年の間、理論予測と測定結果が一致していなかった。理論予測の不確かさは、原子核の構成要素を結合する基本的な力である強い相互作用の効果がそのほとんどを占めている。今回、ブッパータール大学(ドイツ)のSzabolcs Borsanyiらは、強い相互作用の効果のうち最大のものの値を、磁気モーメントの測定に匹敵する精度で計算し、Nature 2021年5月6日号51ページで報告した1。彼らはこの値を使って、標準模型が予言する磁気モーメントは測定結果と矛盾しないことを示した。一方、今回の計算結果は、強い相互作用の効果の以前の計算結果とはいくらか食い違っていた。以前の計算結果は、Borsanyiらが使った方法とは異なる方法に基づいていて、その基礎は堅固だと広く考えられている。

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翻訳:新庄直樹

Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 8

DOI: 10.1038/ndigest.2021.210838

原文

Prediction for magnetic moment of the muon informs a test of the standard model of particle physics
  • Nature (2021-05-06) | DOI: 10.1038/d41586-021-01172-y
  • Harvey B. Meyer
  • Harvey B. Meyerは、ヨハネス・グーテンベルク大学マインツ原子核物理学研究所(ドイツ)に所属。

参考文献

  1. Borsanyi, Sz. et al. Nature 593, 51–55 (2021).
  2. Dirac, P. A. M. Proc. R. Soc. Lond. A 117, 610–624 (1928).
  3. Schwinger, J. Phys. Rev. 73, 416–417 (1948).
  4. Bennett, G. W. et al. Phys. Rev. D 73, 072003 (2006).
  5. Aoyama, T. et al. Phys. Rep. 887, 1–166 (2020).
  6. Blum, T. Phys. Rev. Lett. 91, 052001 (2003).
  7. Meyer, H. B. & Wittig, H. Prog. Part. Nucl. Phys. 104, 46–96 (2019).
  8. Abi, B. et al. Phys. Rev. Lett. 126, 141801 (2021).
  9. Grange, J. et al. Preprint at https://arxiv.org/abs/1501.06858 (2015).
  10. Abe, M. et al. Prog. Theor. Exp. Phys. 2019, 053C02 (2019).