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見落とされていたタンパク質の架橋

オキシトシンの分子モデル
ペプチドホルモンのオキシトシンは視床下部で合成され、分娩時の子宮収縮、乳汁分泌、ストレス抑制、向社会性などの作用がある。9つのアミノ酸(システイン−チロシン−イソロイシン−グルタミン−アスパラギン−システイン−プロリン−ロイシン−グリシン)から成り、2つのシステイン残基のSH基(チオール基)がジスルフィド(S–S)結合している(オレンジ色部分)。S–S結合はタンパク質でよく見られる架橋であるが、今回、これとは異なる結合が発見された。この全く新しい、システイン残基のSH基とリシン残基のNH2基(アミン基)との間に形成されるN‒O‒S結合は、今後のタンパク質の構造や活性の研究に影響を及ぼすだろう。 Credit: KATERYNA KON/SCIENCE PHOTO LIBRARY/Getty

タンパク質の特徴となる形状と機能は、構成アミノ酸が鎖状に連結される順序に依存する。しかし、アミノ酸は連結された後に、さらに化学修飾を受けることが多い。このような修飾には、特定のアミノ酸残基間の架橋が含まれる。最も一般的なタイプの架橋はジスルフィドである。ジスルフィドでは、2個の硫黄原子が共有結合によって結び付く。このほどゲオルク・アウグスト大学ゲッティンゲンおよびマックス・プランク生物物理化学研究所(共にドイツ・ゲッティンゲン)のMarie Wensienらは、1個の窒素原子(N)が1個の酸素原子(O)を介して1個の硫黄原子(S)と結び付く、全く異なるタイプのタンパク質架橋を発見し、Nature 2021年5月20日号460ページで報告している1。さらにWensienらは、このようなN–O–S架橋がこれまでに報告された他のタンパク質の構造解析で見落とされてきたという証拠も示している。

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翻訳:三谷祐貴子

Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 8

DOI: 10.1038/ndigest.2021.210844

原文

Previously unknown type of protein crosslink discovered
  • Nature (2021-05-20) | DOI: 10.1038/d41586-021-01135-3
  • Deborah Fass & Sergey N. Semenov
  • Deborah Fass & Sergey N. Semenovは、共にワイツマン科学研究所(イスラエル・レホボト)に所属。

参考文献

  1. Wensien, M. et al. Nature 593, 460–464 (2021).
  2. Mor-Cohen, R. Antioxid. Redox. Signal. 24, 16–31 (2016).
  3. Hassan, A., Ibrahim, Y. R. & Shawky, A. M. J. Sulfur Chem. 28, 211–222 (2007).
  4. Challis, B. C. & Butler, A. R. in The Chemistry of the Amino Group (ed. Patai, S.) Ch. 6 (Interscience, 1968).
  5. Sawyer, D. T. Oxygen Chemistry Ch. 5–6 (Oxford Univ. Press, 1991).
  6. Lang, P. T. et al. Protein Sci. 19, 1420–1431 (2010).