Where I Work

Geraldine Cox

Credit: Nature by LEONORA SAUNDERS

アートスクールに入学する前には物理学を学んでいました。2011年からロンドン大学インペリアル・カレッジ(英国)物理学科で、非公式の「アーティスト・イン・レジデンス」を務めています。学外の物理学者とも仕事をします。

仕事の多くは、スタジオの外に出て、人々と対話しながら進めます。コロナ禍の今は、研究室ではなくロンドンのハイドパークで科学者たちに会っています。写真は我が家の裏庭にあるスタジオで撮影しました。作品を制作したり、自分の仕事に思いを巡らせたりする場所です。完成した絵は丸めて保管します。後ろに写っている大きなロールがそうです。

壁にはエミリー・ディキンソン(Emily Dickinson)の詩『私は可能性の中に住まう』を飾っています。彼女の詩は豊かで濃密で、幾層もの意味があります。この詩に表現された野心は、私にインスピレーションを与えてくれます。

私はさまざまな研究グループと協力し、芸術を利用して、「光の波動的な振る舞いと粒子的な振る舞いとの間でどのように折り合いをつけるか」などの科学的な問いや答えを表現したり、自然に関する知識を伝えたりしています。今は、超低温分子を作るための実験について説明する鉛筆画の本を制作しています。

有名なヤングのスリット実験を題材にした大作のシリーズにも取り組んでいます。1つの光源から出た光を2つのスリットに通して別々の光路を進ませ、それから再び重ね合わせると、光が当たったスクリーンには干渉によって明暗の縞模様が現れます。私はこの実験に物質粒子も含めたバージョンの作品を制作しています。両方のカテゴリーの粒子を併せ考えるときにだけ、縞模様が現れます。私の絵では、光と物質のパターンをそれぞれ三角形と半円で表現しています。

いくつかの絵はPhysics Today 2021年3月号に掲載されました。

パンデミックの間に、子ども向けのオンライン芸術・科学プログラムも開発しました。分光器を使って各種の化学元素に固有の光の「バーコード」を観察し、そこで学んだことを表現するモビールを制作したりするのです。

私の作品は全て好奇心から生まれていて、常に1つの問いをテーマにしています。科学のように。

翻訳:三枝小夜子

Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 7

DOI: 10.1038/ndigest.2021.210752

原文

‘All my art is curiosity-driven’: the garden studio where art and physics collide
  • Nature (2021-02-17) | DOI: 10.1038/d41586-021-00399-z
  • Josie Glausiusz
  • Geraldine Coxは、英国ロンドン在住のアーティスト。