News in Focus

COVID-19ワクチンの組み合わせ接種は強力な免疫応答を誘導する

Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 7 | doi : 10.1038/ndigest.2021.210712

原文:Nature (2021-05-19) | doi: 10.1038/d41586-021-01359-3 | Mix-and-match COVID vaccines trigger potent immune response

Ewen Callaway

種類の異なるワクチンを組み合わせて接種する方法の利点が試験の予備的な結果で示された。

ファイザー社とアストラゼネカ社のワクチンのバイアル。 | 拡大する

CHRISTOF STACHE/AFP/GETTY

オックスフォード大学/アストラゼネカ社が開発した、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンと、ファイザー社/ビオンテック社が開発したCOVID-19ワクチンを組み合わせて接種することで、COVID-19を引き起こすSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)に対する強力な免疫応答を起こせることが、スペインで行われている試験で明らかになった。

600人以上を対象としたこの試験の予備的な結果は2021年5月18日にオンラインで公表され、種類の異なるCOVID-19ワクチンを組み合わせて接種する方法の利点が初めて示された(go.nature.com/2s62qst参照)。

安全性への懸念から、オックスフォード大学(英国)とアストラゼネカ社(英国ケンブリッジ)が共同開発したワクチンの初回接種を受けた人たちの一部もしくは全員に、2回目の接種時には別のワクチンを用いることを推奨している国が、欧州には既にいくつかある。このような組み合わせ接種法により、同じワクチンを2回接種した場合よりも強力で持続的な免疫応答を引き起こすことができると科学者たちは期待している。ワクチンの供給が不安定な国々にとっても、このような接種法が可能になることにはメリットがあると考えている。

マックマスター大学(カナダ・ハミルトン)の免疫学者Zhou Xingは、「アストラゼネカ社のワクチンで初回接種を受けた人にファイザー社のワクチンをブースター(追加免疫)接種すると、抗体応答が顕著に増強するようです。これはいろいろな意味で素晴らしいニュースと言えます」と話す。

プライム・ブースト接種法

オックスフォード大学/アストラゼネカ社のワクチンは、チンパンジー由来でヒトには無害な弱毒化「アデノウイルス」を利用して、ヒトの細胞にSARS-CoV-2のタンパク質を作らせる指示を与え、免疫を誘導する。スペインで2021年4月に始まったCombivacS試験では、このワクチンで初回接種を受けた663人が登録された。参加者の中から3分の2を無作為に選び、初回接種から少なくとも8週間空けて、ファイザー社(本社は米国ニューヨーク)とビオンテック社(ドイツ・マインツ)が共同開発したmRNAワクチンを接種した。対照群の232人はブースター接種を受けていない。試験はカルロス3世衛生研究所(スペイン・マドリード)の主導により実施された。

CombivacS試験の研究責任者の1人であるバル・デブロン大学病院(スペイン・バルセロナ)のMagdalena Campinsは、初回接種がオックスフォード大学/アストラゼネカ社のワクチンだった参加者の免疫系が、ファイザー社/ビオンテック社のワクチンによるブースター接種で賦活化されたと説明している。この2回目の接種後、参加者は初回接種後よりもはるかに多くの抗体を産生し始めた。実験室での研究では、この抗体はSARS-CoV-2を認識して不活化させることができた。一方、ブースター接種を受けていない対照群では、抗体レベルに変化は見られなかった。

これは研究者たちにとって予想通りの結果であった。種類の異なるワクチンを組み合わせて接種する方法はプライム・ブースト異種ワクチン接種法(heterologous prime and boost)と呼ばれ、エボラ出血熱などの感染症に対するワクチン接種で採用されている。ベス・イスラエル・ディーコネス医療センター(米国マサチューセッツ州ボストン)でウイルス学・ワクチン研究センターのセンター長を務めるDan Barouchは、「この試験の結果は有望に思われ、プライム・ブースト異種ワクチン接種法の可能性を示しています」と話す。

Xingによれば、試験の予備的な結果を見る限り、ファイザー社/ビオンテック社のワクチンを用いたブースター接種に対する抗体応答は、オックスフォード大学/アストラゼネカ社のワクチンを2回接種した後の抗体応答に比べて多くの人で強くなるようだ。しかし、ファイザー社/ビオンテック社のワクチンと同様のmRNAワクチンを2回接種したときの応答との比較は行われていない。mRNAワクチンでは、2回目の接種で特に強力な抗体応答が引き起こされることが分かっている。

ロンドン大学インペリアルカレッジ(英国)の免疫学者Daniel Altmannは、1回目と2回目で種類の異なるワクチンを接種することは、おそらく理にかなっていると考えられるが、免疫を持続させたり、新しい変異株への感染を防いだりするために、3回目の接種が必要になった場合はどうなるのかが知りたいと話す。オックスフォード大学/アストラゼネカ社のもののようなアデノウイルスを利用したワクチンは、接種を繰り返すことで免疫系がアデノウイルスに対して反応を起こすようになり、次第に効果が低下してくる傾向がある。一方、mRNAワクチンは接種を繰り返すと、より強い副反応を引き起こすようになってくる。「こうした問題は今後、ワクチン学の重要な課題になるだろうと私は思います」とAltmannは言う。

スペインのCombivacS試験で検討された2種類のワクチンについて、英国でも組み合わせ接種を検討する試験が実施されている。このCom-COV試験に関して、2021年5月12日に公表された最初の反応原性試験の結果によれば、組み合わせ接種を受けた人たちは1種類のワクチンを2回接種した人たちと比較して、発熱などの一般的なワクチン関連副反応の発生率が高かった(R. H. Shaw et al. Lancet https://doi.org/gdb3; 2021)。一方、CombivacS試験で観察された副反応は、COVID-19ワクチンの標準的な接種法で観察されるものと同様に軽度のものが多く、重度と見なされる副反応は認められなかった(2021年1月号「SARS-CoV-2ワクチンの開発競争を注視する」参照)。

(翻訳:藤山与一)

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

プライバシーマーク制度