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β細胞でインスリン作用を調整するブレーキが発見された
インスリンが糖尿病の治療に最初に使用されてから、ほぼ1世紀になる1。それ以来、インスリンとその関連分子であるインスリン様増殖因子1(IGF1)によって調節される、複雑な代謝経路について非常に多くのことが分かってきている。インスリンやIGF1は受容体タンパク質を介して作用するが2、これらの受容体の活性が、実際にインスリンを産生する細胞である膵臓β細胞において調節される仕組みはよく分かっていない。現在、このような知識が緊急に必要とされているのは、β細胞機能の低下が糖尿病の主要な原因だからである。従って、β細胞を調節する分子経路の解明は、糖尿病の管理の改善や予防に役立つ可能性がある。このほどホルムヘルツセンターミュンヘンおよびドイツ糖尿病研究センター(共にドイツ・ノイヘルベルク)のAnsarullahら3は、これまで知られていなかったβ細胞の調節因子を特定し、このタンパク質がインスリン受容体の発現を「調整」できる機構についての概要をNature 2021年2月11日号326ページで報告した。
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翻訳:三谷祐貴子
Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 5
DOI: 10.1038/ndigest.2021.210540
原文
New-found brake calibrates insulin action in β-cells- Nature (2021-02-11) | DOI: 10.1038/d41586-021-00141-9
- Rohit N. Kulkarni
- Rohit N. Kulkarniは、ジョスリン糖尿病センター、ハーバード大学医学系大学院、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院、ハーバード幹細胞研究所(以上、米国マサチューセッツ州ボストン)に所属。
参考文献
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