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COVIDは2020年のCO2排出を抑制したが、長くは続かなかった

Credit: Erin Clark/The Boston Globe via Getty

世界の二酸化炭素排出量は、数十年にわたって徐々に上昇してきた。しかし、新しいデータによると、2020年、COVID19パンデミックによる世界中の社会的・経済的活動の落ち込みによって、世界の二酸化炭素排出量は6.4%(23億トン)減少した。この減少量(図「二酸化炭素排出量の減少」参照)は日本の年間排出量のおよそ2倍だが、多くの研究者は、ウイルスが制圧されたらこの状態は続かないと予想している。

二酸化炭素排出量の減少
パンデミックによって多くの国でCO2排出量が減少したが、その傾向はさま ざまであった。中国は、2020年初期のアウトブレイク後に経済が回復したため、排出量減少はわずかだった。米国は、1年を通してアウトブレイクが継続したため、排出量の減少幅が最大を記録した。 Credit: SOURCE: CARBON MONITOR PROGRAMME/NATURE ANALYSIS

2020年10月に上半期の排出データ が Nature CommunicationsZ. Liu et al. Nature Commun. 11, 5172; 2020)に報告されたのに続き、今回、2020年の全データがNature に提供された。パンデミックの規模から考えると、「排出量の減少は、既に、予想以上に鈍化しています」と清華大学(中国・北京)の地球システム科学者Zhu Liuは言う。Liuは、今回データを提供したカーボンモニター(Carbon Monitor)という国際プログラムを率いる研究者の1人だ。「パンデミックが収束したら、おそらく非常に強いリバウンドが起こるでしょう」(図「排出量のリバウンド」参照)。

排出量のリバウンド
2020年、世界の二酸化炭素排出量は、COVID-19パンデミックの初期に急激に減少したものの、世界の経済活動が回復するにつれ増加に転じた。新型コロナウイルス感染症の急増に伴い新たな制限を導入した国もあったが、増加傾向は続いた。 Credit: SOURCE: CARBON MONITOR PROGRAMME/NATURE ANALYSIS

パンデミックの制約の影響を最も大きく受けたエネルギー部門は航空部門であり、2019年に比べ総排出量は48%低下した。

パンデミックにより、気候変動と闘うと確約した各国は、この課題特有の視点があることを認識した。国連環境計画(United Nations Environment Programme)は、産業革命以前の水準から1.5℃以上の地球温暖化を防ぐ(2015年のパリ協定で設定された目標)には、次の10年で世界の二酸化炭素排出量を毎年7.6%ずつ削減する必要があると推定している。

翻訳:藤野正美

Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 4

DOI: 10.1038/ndigest.2021.210413

原文

COVID curbed carbon emissions in 2020 — but not by much
  • Nature (2021-01-15) | DOI: 10.1038/d41586-021-00090-3
  • Jeff Tollefson