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学術界サバイバル術入門 — 査読をする③:査読レポートを書く(前編)

Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 3 | doi : 10.1038/ndigest.2021.210334

ここまで、査読依頼が来たらどうするか、査読をどのように行うかについてお話ししました。今回は、編集者と著者に伝わる査読レポートの書き方について前編・後編に分けて詳しくお話しします。

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Feodora Chiosea/iStock/Getty

学術界サバイバル術入門
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有能な査読者になるための3回シリーズも、今回がいよいよ最終回です。第1回と第2回では、査読依頼を受ける前、そして論文原稿を評価する際に考察すべき重要な点についてお話ししました。今回は、あなたが論文原稿を読んで気付いた問題点を、査読レポートでどうやって編集者や著者に伝えたらいいかを考えていきます。この前編では、査読レポートを書く際の重要なポイントについて、後編では体裁について、具体例を用いて説明していきます。

査読レポートの利点

レポートを検討する際、編集者はいろいろな問題に直面しますが、査読者はそうした問題に気付いていないことが往々にしてあります。編集者があなたに助言を望んでいるのは、①この研究がその分野に適したものかどうか、②結果と結論の妥当性を確認するために研究を改善するにはどうしたらいいか、という2点であることを思い出してください。もちろん、編集者がその論文の掲載を検討する際に参考にする査読レポートは、あなたのものだけではありません。ほとんどの学術誌が3人の査読者に依頼しますから、編集上の決定をする前に、編集者は3つのレポート全てに目を通すのです。

従って、覚えておくべき重要なポイントは、あなたのレポートを綿密で、客観的、かつ建設的なものにすること、そして全ての主張は証拠によって裏付けられているようにすることです。編集者は、レポートに提示された情報に基づいて決定を下す必要があります。もしも編集者が、レポートに全幅の信頼を置けないと感じるなら、そのレポートの影響力は低下する可能性があります。編集者は多数決で決めることはありませんが、研究に関する査読者の主張を熟考します。つまり、あなたのレポートに影響力を持たせるためには、それらの主張は……そうです、あなたが思った通り、綿密で客観的かつ建設的で、全ての主張が証拠によって裏付けられている必要があるのです。

  • 「綿密さ」
    綿密なレポートを書くことで、あなたが、時間をかけて慎重に論文原稿を評価しており、研究を理解している(すなわち、トピックと技術に関して専門知識を有している)ことを編集者に示せます。
  • 「客観的」
    編集者は、あなたの評価が肯定的あるいは否定的な利害対立によって影響を受けていない、という確証が欲しいと考えています。言い換えれば、あなたのコメントと推奨は「信じられる」と、彼らは確信したいのです。
  • 「建設的」
    レポートの目的は著者を助けることであり、著者に研究を諦めさせることではありません! 懸念されることは何か、なぜそれらが問題なのかを説明し、どのように改善したらよいかを提案しましょう。
  • 「裏付け」
    これはあなたの専門知識に関連します。研究または論文原稿に問題を見つけたら、それがなぜ問題なのかを立証すべきです。もしできないなら編集者は、あなたの指摘は研究に対する単なる意見にすぎず、研究の妥当性に影響するものではなさそうだ、と考えるかもしれません。

プロ意識を持って丁寧に

前述のように、査読レポートは著者を助けるためのものです。ですから、プロ意識を持って、丁寧に対応すべきです。そうしなければ、著者はおそらく編集者に苦情を訴えるでしょうし、それによってあなたの査読者としての印象が悪くなりかねません。レポート作成時には次の3つの重要事項を心に留めておくことをお勧めします。

① 否定的なコメントを避ける

「表3はひどい上に不明瞭である」なんてコメントを読みたい人はいませんよね。著者たちが知りたいのは、表3のどこが悪いのか、なぜ不明瞭なのか、どうやったら改善できるのか、です。

悪い例:

“Table 3 is terrible. It is unclear and confusing for readers and should be improved before publication.”

参考訳:

表3はひどい。不明瞭で、読者を混乱させるものであり、論文を発表する前に改善されるべきである。

良い例:

“Columns 4 and 5 in Table 3 are not directly related to the outcomes that are being evaluated in this experiment. This could be misleading to readers in assuming that this information was included in the analyses, when it was not. I suggest that the author either removes this information from the table or moves them to Supplementary Information.”

参考訳:

表3の4列と5列は、この実験で評価されている結果に直接関連していない。この情報が分析に含まれていたと読者が誤解をする恐れがある。著者には、表からこの情報を取り除くか、それらを補足情報に移動させることを推奨する。

② 具体的に述べる

論文原稿は、多くの情報が盛り込まれているため長いのです。査読者は、自分が原稿のどの部分について言及しているかを正確に知っているかもしれませんが、編集者と著者には分からない場合があります。ですから、あなたの考えを論じるときには常に、どの箇所について述べているかを具体的に示しましょう。

悪い例:

“The interpretations are often overgeneralizing and should be restricted to the population that was being addressed in the study.”

参考訳:

しばしば解釈が一般化され過ぎている。解釈はこの研究で扱われた集団に限定されるべきである。

良い例:

“The interpretations of Figures 3 and 4 in the Discussion are overgeneralizing (page 17, lines 21–35). The authors only evaluated residents in sparce rural areas, so they should not assume similar effects in crowded metropolitan regions. This would be need to be further validated in future studies.”

参考訳:

考察の図3と4の解釈は一般化され過ぎている(p.17、21~35行)。著者が評価したのは、人口密度の低い農村地域の居住者のみであり、人口密度の高い大都市圏でも類似した影響があると推定するべきでない。これに関しては、将来の研究でさらに妥当性を確認すべきだろう。

③ 明確な英語を使う

文章を書くとき、私たちは自分が何を考えているかを読者が正確に分かってくれていると思いがちです。悲しいかな、通常、それは真実ではありません。明確に情報を伝達しなければ、その情報は誤解を招いたり不明瞭であったりするかもしれません。その研究に関連する重要で、しかも、しばしば複雑な問題を査読レポートで伝えたい場合は、特に意識すべきです。さらに、査読者や著者の母国語が英語ではない可能性もあるわけです。第二言語によって複雑な考えを明確に伝えるのは至難の業です! 従って、レポートを書くときには、誤解の可能性を避けるために、明確かつ簡潔に書きましょう。

悪い例:

“Although the study evaluated the complicated relationships among the various groups – particularly those among the groups in the first phase of the study – it would be beneficial for the further comprehension of the multitude of readers worldwide if the study further conducted an assessment of the maximum efficiency of the cost reduction measures.”

参考訳:

この研究はさまざまな集団間の複雑な関係(特に研究の第1段階における集団間の関係)を評価したが、さらにコスト削減策の最高効率に関する評価を行えば、世界中の多数の読者のさらなる理解にとって有益であろう。

良い例:

“The study carefully evaluated the complicated relationships among the groups, particularly those in the first phase of the study. However, also assessing the efficiency of the cost reduction measures would further improve understanding for international readers.”

参考訳:

この研究は集団間、特に研究の第1段階における集団間において慎重に複雑な関係を評価した。しかし、コスト削減策の効率に関する評価も行えば、世界中の読者の理解をさらに深めることになるだろう。

最後にもう1つアドバイスを。研究の欠点や限界を指摘することに加えて、その強みや恩恵もはっきり示しましょう。著者は、必要な改善点だけでなく、どこが良かったかも知りたいと考えているのです。

後半は、査読者レポートの体裁についてお話しします。

学術誌によって用いる査読レポートのテンプレートは異なります。体裁が決まっている場合もあれば、ある程度決まっている場合、全く体裁が決まっていない場合もあります。編集者がどんなレポートを期待しているかを知っておき、要求されるどんなテンプレートにも対応できるようにしておきましょう。全体的に見て、3つの共通するセクションがあるでしょう。①要約、②編集者に宛てた非公開のコメント、③著者へのコメント(重要なものおよび軽微なもの)です。次はこの3点について、例を挙げながら具体的に説明します。

次回は、2021年5月号の予定です。

(翻訳:古川奈々子)

ジェフリー・ローベンズ(Jeffrey Robens)

Nature Research Academies 筆頭講師。自然科学分野で多数の論文発表と受賞の経験を持つ研究者でもある。


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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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