Where I Work

Mina Weinstein-Evron

Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 2 | doi : 10.1038/ndigest.2021.210256

原文:Nature (2020-08-03) | doi: 10.1038/d41586-020-02285-6 | Where I Work: Mina Weinstein-Evron

Corinna Kern

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Nature by Corinna Kern

私は発掘現場との強い結び付きを感じています。写真は、イスラエルのカルメル山にあるスフール洞窟の入り口で撮影しました。カルメル山は地中海に面した海岸平野を見下ろす丘陵で、切り立った崖には多くの洞窟があります。カルメル山の洞窟は、50万年以上の人類進化の歴史を証言する、他に類を見ない素晴らしい場所です。中でもスフール洞窟には、既知のものとしては最も古い、約10万年前の儀式的埋葬地があります。

洞窟遺跡群がある崖は天然のランドマークです。おそらく20万年前に初めてこれを見た人々は、その迫力に圧倒されたことでしょう。無関心ではいられない地形です。はるかな昔、湿地や草原や砂丘の中にこの崖がどんなふうにそそり立っていたか、想像するのは難しくありません。

スフール洞窟から北に数km離れた所には、ミスリヤ洞窟があります。西側の崖の最も高い所にある洞窟で、海抜は90mです。ミスリヤ洞窟はカルメル山で発掘が行われた最後の洞窟です。2002年に16万年以上前の地層からヒトの顎の骨の一部が発見されました。私はこの発掘チームのメンバーでした。見つかった顎の骨が解剖学的に現生人類のものであることはすぐに分かりましたが、そのことを証明するのは非常に骨が折れました。顎の骨は少なくとも17万7000年前のもので、当時アフリカ以外で見つかっていた最古のホモ・サピエンスの化石より5万5000年も古かったのです。私たちは、ミスリヤ洞窟で暮らしていた人が進化の過程のどのような位置付けにあったのか、そして、彼らよりも前にこの場所で暮らしていたネアンデルタール人やその他の古代人類とどのように交流していたのかを理解したいと考えています。

私たちのフィールドワークはコロナ禍の影響をあまり受けていません。洞窟での最後の発掘シーズンは、各種の規制が始まる直前の2020年3月5日に終了しました。

カルメル山の洞窟群は、私の仕事にとってもプライベートにとっても親しみのある場所になりました。自分のもののような感じさえしますが、同時に責任も感じています。

多くの成果をもたらしてくれたミスリヤ洞窟遺跡には、本当に感謝しています。ここではヒトの顎の骨の他に、精巧な火打ち石や多数の動物の骨も見つかりました。私は、90年以上にわたってこの洞窟を調べてきた研究者の系譜に連なることができ、それを誇りに思っています。

(翻訳:三枝小夜子)

Mina Weinstein-Evronは、 ハイファ大学(イスラエル)の考古学者

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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