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「はやぶさ2」が地球に届けたカプセルに小惑星の試料を確認

Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 2 | doi : 10.1038/ndigest.2021.210203

原文:Nature (2020-10-15) | doi: 10.1038/d41586-020-03451-6 | Asteroid dust recovered from Japan’s daring Hayabusa2 mission

Smrity Mallapaty

科学者たちは、日本の小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウから持ち帰った黒い粒子を調べることで、太陽系の形成過程の理解が深まることを期待している。

南オーストラリア州の砂漠に着地した「はやぶさ2」のカプセル。 | 拡大する

JAXA

小惑星の試料を地球に持ち帰る日本のミッションが成功した。2020年12月14日、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA;神奈川県相模原市)は、小惑星探査機「はやぶさ2」から分離して同6日にオーストラリアの砂漠に着地した再突入カプセルに、小惑星リュウグウの黒い粒子が入っていることを確認した。

ミッションを率いたJAXAの津田雄一プロジェクトマネージャは、「サンプルが確認できたことは、私たちにとってもJAXAにとっても非常に重要なマイルストーンです」と言う。

JAXAは声明の中で、サンプルコンテナ内のサンプルキャッチャーA室で砂状の物質を確認したとしているが、より内側のサンプルキャッチャーB室およびC室の開封作業はまだ行っておらず、他にも試料が入っているかどうかは確認できていない(訳註:JAXAは2020年12月18日の発表で、A、B、C室内の試料の合計が約5.4gであったことを報告。同24日には、開封されたB室とC室でも、肉眼で見えるレベルの細かい粒子が確認されたと発表した。特にC室では5mmより大きい試料が複数確認されている)。

光学顕微鏡で観察されたA室の試料(左)。C室(右)には5mm超の小石が見つかった。 | 拡大する

JAXA

科学者が小惑星の試料を地球に持ち帰ったのは、今回でまだ2回目である。リュウグウからの試料は、惑星の初期の進化について研究者に重要な洞察を与え、地球上の水の起源の説明にも役立つ可能性がある1,2

「はやぶさ2」の追跡とリュウグウへの到着に協力したオーストラリア連邦科学産業機構キャンベラ深宇宙通信施設の所長Ed Kruzinsは、「小惑星の物質を含む貴重な試料は、科学者たちに太陽系の形成に関する重要な情報をもたらすでしょう」と言う。

再突入カプセルの旅

2020年12月6日未明、南の空に明るい火球が出現し、南オーストラリア州の砂漠に落下した。リュウグウの試料が入っているはずの再突入カプセルだ。科学者たちは早速、その探索に取りかかった。

このミッションのサブマネージャである中澤暁は、オーストラリアのウーメラ滞在中に、「『はやぶさ2』が着陸オペレーション中に撮影した画像で、リュウグウから試料を採取できたことは確信しています」とメールに書いていた。しかし、カプセルを開封して黒い粒子を見るまでは、プロジェクトチームにも確かなことは分からなかった。

カプセルは、オーストラリアの砂漠で発見されてから約57時間後に日本に届けられた。迅速に輸送できたことは、「リュウグウで採取した試料が、地球の大気による汚染のない、非常に清浄な状態にあることを意味します。私たちは漏れが一切なかったことを確認できました」と津田は言う。

今後の予定

JAXAの科学者たちは、カプセルからサンプルコンテナを取り出し、コンテナを開封してサンプルキャッチャーを取り出した後、中に入っている試料の質量を測定し、その組成や構造を調べることになっている。JAXAの「はやぶさ2」ミッションマネージャの吉川真は、目標は少なくとも0.1gの物質を採取することだと述べていた。

「はやぶさ2」が持ち帰った試料の約10%は、2021年12月に米航空宇宙局(NASA)に送られることになっている。JAXAはその見返りとして、2020年10月にNASAの小惑星探査機「オシリス・レックス(OSIRIS-REx)」が採取し、2023年後半までに地球に持ち帰る予定の小惑星ベンヌの試料を受け取る。さらに15%は各国の研究者に提供され、約40%は将来の科学者の研究用に保管される予定である。

「はやぶさ2」は1年半にわたってリュウグウを何度もつついて試料を採取した。リュウグウはコマ型の小さな小惑星で、表面には大きな石がゴロゴロしている3。炭素を豊富に含むC型小惑星であり、科学者たちは46億年前の有機物や含水鉱物が保存されているのではないかと考えている4。その試料は、地球が水で覆われるようになった経緯を説明するのに役立つ可能性がある。地球上の水は、太陽系の外縁領域の小惑星や同様の惑星状天体から来たと、科学者たちは考えている。

津田は、リュウグウの試料に、地球上の有機物に似た、もっと複雑な有機物が含まれているかどうかを明らかにしたいと考えている。「もしリュウグウで非常に複雑な有機物が見つかったら、大発見になります」。

カプセルを分離した「はやぶさ2」は、既に次の目的地である小惑星1998 KY26に向かっている。高速で自転するこの小惑星に到達するのは11年後だ。その前に、別の小惑星2001 CC21への接近通過を行い、さらに地球スイングバイを2回行う予定である。

(翻訳:三枝小夜子)

参考文献

  1. Snider, E. et al. Nature 586, 373–377 (2020).
  2. Drozdov, A. P., Eremets, M. I., Troyan, I. A., Ksenofontov, V. & Shylin, S. I. Nature 525, 73–76 (2015).
  3. Somayazulu, M. et al. Phys. Rev. Lett. 122, 027001 (2019).
  4. N. W. Ashcroft Phys. Rev. Lett. 92, 187002 (2004).

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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