Where I Work

María Fernanda Cerdá

Credit: PABLO ALBARENGA

私は、果物や花に含まれる天然色素を利用した太陽電池を開発しています。植物が持つアントシアニンという色素は、太陽の光エネルギーを吸収して別の種類のエネルギーに変換することで、光合成を補助しています。植物の色素を利用した色素増感太陽電池の研究はスイスで始まりましたが、私はウルグアイに自生する植物の色素を使っています。

写真は、国花のアメリカデイゴ(Erythrina crista-galli)からの抽出物を精製しているところです。鮮やかな赤い色素を取り出したら、太陽光をエネルギーに変換する効率を測定します。ここで使うのが、太陽光と同じ光を作り出すソーラーシミュレーターです。側面に小さな黒い箱が付いている灰色の装置がそれです。その下の木製の台は、装置を持ち上げて試料に届く光量を制御するためのもので、夫の手作りです。

私はウルグアイの首都モンテビデオにある共和国大学で、30年間研究をしています。最初は医療用放射性物質の合成に従事し、その後、電気化学者になりました。天然色素は不安定なので太陽電池には向いていないという意見もありますが、私が2019年に試作した太陽光パネルは、南極にあるウルグアイのアルティガス基地での2年に及ぶ試験の間、光がほとんどなくなる冬も含めて途切れることなく稼働し続けました。

ウルグアイでは、太陽光発電によって生み出される電力は全体の1%にもなりませんが、私の仕事が未来に向けた一歩になることを願っています。

ウルグアイは非常に小さな国で、科学者の数も少ないため、私と同じ研究をしている人はいません。私の専門分野である光電工学の研究者のほとんどが男性です。私は女性で、化学者なので、キャリアに行き詰まりを感じてきました。3人の娘たちは私とは違う育ち方をしているので、もっと先に行けるでしょう。

研究資金が乏しく、人を雇う余裕がないので、私は54歳になった今でも、この写真のように実験室で作業をしています。大好きな仕事なので、不満はありません。ここが私の場所です。グループの皆が私の気持ちを理解し、尊重してくれています。

翻訳:三枝小夜子

Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 12

DOI: 10.1038/ndigest.2021.211252

原文

Power plants: making electricity from flowers and fruits
  • Nature (2021-08-09) | DOI: 10.1038/d41586-021-02171-9
  • Linda Nordling
  • María Fernanda Cerdáは、共和国大学(ウルグアイ・モンテビデオ)の化学者。