女性科学者の割合が過去最高に
ライデン大学(オランダ)の定量科学者Ludo Waltmanらは、エルゼビア社(Elsevier)が運営する大規模な抄録・引用文献データベース「Scopus」を分析し、1996〜2018年に論文を3本以上出版した約600万人の研究者の論文出版歴を調べた(H. Boekhout et al. Preprint at https://arxiv.org/abs/2106.12624;2021)。
分析の結果、この期間に科学の道に進んだ人々の中で女性の占める割合が増加していることが明らかになった。2000年に論文を出版し始めた研究者のうち女性は33%だったが、近年は40%前後まで上昇している(「ジェンダーギャップ」参照)。
ただし、物理学・天文学、数学、工学の分野では、近年もなお、男性著者が高い割合を占めている(「分野ごとの違い」)。
Waltmanのチームはさらに、この研究者たちの出版記録を追跡し、論文を出版し続けているかどうかを調べた。科学者としてのキャリアを歩み続けていると考えられるからだ。分析の結果、その割合は女性の方が低かった。この傾向は、そのキャリアを歩み始めた年代に関係なく見られた。
ただし、差は小さかった。2000年に論文を出版し始めた女性のうち54%が2015年までに論文を出版しなくなっていたが、男性でもその割合は52%に上るのだ。上級職に昇進する女性は男性よりも少ないという事実を考えると、この結果はむしろ意外だったとWaltmanらは言う。
それでも昇進には歴然とした男女差があり、このことは以前から問題となっている。総じて、男性は女性に比べて上級職に昇進するペースが速いように見えた(昇進の事実は、論文のラストオーサーになっていることから大ざっぱだが判断できる)。また、分野によってばらつきがあるものの、データ収集期間を通じて、男性の論文出版数は女性よりも平均15〜20%多かった。
なお、この研究ではインドと中国のデータが除外されている。分析に使用したアルゴリズムがインド人と中国人の名前から性別を推定できなかったためだ。ノンバイナリー(男性でも女性でもないという性自認)の人々も数えられていない。
欠点はあるが、これは「誠実な研究」であり、Scopusのデータベースは貴重な情報源だと、ミラノ大学(イタリア)の社会学者Flaminio Squazzoniは評価する。
翻訳:三枝小夜子
Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 11
DOI: 10.1038/ndigest.2021.211109
原文
More women than ever are starting careers in science- Nature (2021-08-05) | DOI: 10.1038/d41586-021-02147-9
- Katharine Sanderson
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