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ISSでの科学実験は20年間に約3000回

Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 1 | doi : 10.1038/ndigest.2021.210102

原文:Nature (2020-11-03) | doi: 10.1038/d41586-020-03085-8 | Astronauts have conducted nearly 3,000 science experiments aboard the ISS

Alexandra Witze

国際宇宙ステーションに人類が滞在を始めて20年。その間、どのような実験が行われてきたかを紹介する。

スペースシャトル「アトランティス」が2006年9月17日に撮影したISS。 | 拡大する

NASA

2000年11月2日、1人の米国人宇宙飛行士と2人のロシア人宇宙飛行士が、新たに建造された国際宇宙ステーション(ISS)のハッチを開けて入室した。以来、人類は地球周回軌道上の前哨基地で20年間途切れることなく生活し、仕事をしている。

その間、ISSの宇宙飛行士たちは約3000回の科学実験を行ってきた。研究分野は、基礎物理学、地球観測、生物医学など多岐にわたる(「軌道上で行われた研究」参照)。ISSでの科学は、かつてはさほど重要ではなく、地球に住む人々にはあまり関係がないと批判されていたが、宇宙飛行士たちがより多くの時間を研究に割けるようになると見事に花開いた。ヒトや他の動物が長期にわたる宇宙飛行にどのように適応していくのか、物質は宇宙空間でどのように振る舞うのかなど、さまざまな知見がここで得られている(「野心的な実験」参照)。

軌道上で行われた研究
宇宙飛行士たちは国際宇宙ステーションで3000近い科学実験を行ってきた。 | 拡大する

Source: NASA

ISSには、最近設置されたばかりの共焦点顕微鏡をはじめ、最新鋭の研究機器が詰め込まれている。現在ISSに搭乗している米航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士で生物学者のKate Rubinsは、2020年10月30日、メディアから寄せられた質問に対し微小重力状態の船内に浮かびながら、ISSの実験設備は「世界レベルの大学をまるごと1つ持ってきて、ISSの大きさに合わせて縮めたようなもの」だと説明した。彼女はその前の週には、ISS内の植物栽培室で作業をしたり、微小重力下での液滴と表面との相互作用をテストする物理学実験をしたりしていたという。

ISSで行われる科学実験の多くは、特定の現象(炎の燃え方やマウス細胞の発生の仕方など)が微小重力下では地球上とどう違うかを調べて、地球上での新技術や新薬の開発に応用できるかどうかを検証することを目的としている。その他の実験では、宇宙ステーションの地球低軌道上の位置を利用して、地球を見下ろしたり、宇宙を見たりしている。

かつてNASAの主任科学者で国立航空宇宙博物館(米国ワシントンD.C.)の館長であるEllen Stofanは、「個人的には、ヒトの健康に関する実験が気に入っています。しかし、その研究が国際宇宙ステーションでどれだけ行われてきたか、多くの人は気付いていません」。

宇宙開発プログラムのごく初期の頃から、科学者たちは軌道上の宇宙飛行士の筋肉量が減り過ぎたり放射線を浴び過ぎたりしないように、その健康状態を研究してきた。しかし、ISSでは研究の幅が大きく広がり、ヒトの免疫系の強化に役立つT細胞の活性化に重力が及ぼす影響などが調べられている。軌道上で宇宙飛行士の免疫系が抑制される理由とその機構を知ることで、地球上の科学者たちがより良い医薬品を開発するのを助けることができるとStofanは言う。

ISSプログラムには、米国、ロシア、カナダ、日本および欧州11カ国が参加している。少なくとも2024年まで運用されることが決まっているが、2028年まで延長するための議論が行われている。

野心的な実験

国際宇宙ステーション(ISS)で行われた主な実験の一部を紹介する。

宇宙冷却原子実験室

2020年、物理学者たちはこの施設を使って宇宙空間で初めてボース・アインシュタイン凝縮というエキゾチックな物質状態を生成したと報告した。宇宙飛行士らは微小重力下で原子集団がどのように振る舞うかを調べた(2020年9月号「宇宙にある極低温実験室で奇妙な物質状態を生成」参照)。

アルファ磁気分光器

この宇宙線検出器はISSの外側に取り付けられており、暗黒物質粒子を探している。この実験に投じられた費用は20億ドル(約2100億円)に上る。損傷した冷却ポンプを修理するため、2019年には数回の複雑な船外活動が行われた。

齧歯類研究

ISSには多くのマウスやラットも乗った。2019年のある研究では、日本の研究者らが、ISSのケージの中で35日間宙に浮いていたオスのマウスが、その後、健康な仔を作ることができたと報告している。

宇宙の植物

NASAの宇宙飛行士Don Pettitは、2012年にISSに乗った宇宙ズッキーニの一生を記録した。宇宙飛行士たちは他にも、宇宙での長期滞在中の食生活を改善するためにレタスなどの野菜を栽培している。

双子研究

NASAはScott KellyとMark Kellyという一卵性双生児の宇宙飛行士がいることを利用して、宇宙飛行が人体に引き起こす変化をモニターした。2015〜16年、ScottはISSに1年近く滞在し、兄のMarkは地上に残った。その結果、宇宙で過ごしたScottの体で遺伝子発現の変化などが確認された(2019年6月号「宇宙滞在の影響が双子研究で明らかに」参照)。

軌道上炭素観測衛星OCO-3

ISSの外側に、地球に向けて設置されたこの装置は、地球の周りを回りながら二酸化炭素の排出を追跡している(2014年9月号「地球の呼吸を探る、NASAの炭素観測衛星OCO-2」参照)。

(翻訳:三枝小夜子)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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