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地震音で海の温度を知る

Nature ダイジェスト Vol. 18 No. 1 | doi : 10.1038/ndigest.2021.210128a

広域の温度変化を追跡する新手法。

海水温を測定する新しい手法は、海底地震で生じた「音」を利用する。 | 拡大する

LINDSAY_IMAGERY/E+/GETTY

音を利用して海水温を測る独創的な方法が実現しそうだ。海は温室効果ガスが捕捉した過剰熱の約90%を吸収しており、気候変動とともに海水温は着実に上昇している。この水温上昇が海面上昇を招き、海洋生物を脅かし、気象パターンに影響を及ぼしている。

だが海水温を追跡するのはなかなか難しい。船による観測は、海のほんの一部分についてのスナップショットしか捉えられない。人工衛星による観測では、深海まで見通すことはできない。海洋熱の最も詳しい姿を捉えているのは「アルゴ計画」のデータだ。20年近く前から世界の海に展開されてきた自律型の観測フロート群で、水深2000mまで潜ることができる。だがフロートは約4000機しかない上、もっと深い所のサンプルを得ることもできない。

これに対し、このたびカリフォルニア工科大学(米国)と中国科学院の研究チームは、海底地震で生じた音の伝播速度を比較することで広域にわたる海洋の温暖化を明らかにし、Scienceに報告した。音が水中を進む速度は水温が高いほど速くなるので、この速度の違いから温度変化が分かる。「彼らは全く新しい研究分野を切り開いている」と、プリンストン大学(米国)の地球物理学者Frederik Simonsは評する。

音を用いて海洋熱を測定する方法そのものは1979年に提案されたが、海に音源を設置するのは費用がかさむ上、海洋動物に悪影響を与える懸念があった。カリフォルニア工科大学の研究者Wenbo Wuはそうした初期の取り組みにヒントを得て、海底地震で放出された低周波の音波を観測することを思いついた。「地震が非常に強力な音波源であることは分かっています。これを使わない手はありません」。

インドネシア近海に適用

Wuらはインドネシアのニアス島の近海を対象に、この方法を試した。この付近では、インド・オーストラリアプレートがスンダプレートの下に沈み込んでいる。チームは2004~2016年に発生したマグニチュード3以上の地震4272件についての音響データを集めた。そして、異なる年に同一地点で起こった地震から生じた音波の伝播速度を比較した。このわずかな差(到達時間にして1秒に満たない)に基づいて計算した結果、ニアス島の近海の海水温が10年間で約0.04℃上昇したことが分かった。アルゴのデータから示唆された0.026℃を上回っている。この差はわずかに思えるかもしれないが、インド洋東部の全体で考えるとかなりの熱だ。

この新手法は有望だと、ハワイ大学(米国)の海洋学者Bruce Howeは評する。数十年前に記録された地震データにさかのぼって解析すれば、より長期にわたる海洋の温度変化が分かる可能性がある。ただし、昔の地震計は現在のGPS(全地球測位システム)に基づく機器に比べると、音波のタイミングに関する記録精度は低い。

(翻訳協力:粟木瑞穂)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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