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最初に合成された遺伝子アルファベットの有力候補

遺伝的ポリマーであるRNAとDNAは、全ての生体系における情報保存の要であり、それ故、生命の起源に関するほとんどの仮説の核心となっている。こうした仮説の中で最も有名なのが、「RNAワールド」仮説である1。この説では、生命出現前の地球上においては、RNAが中心的な情報担体かつ生化学反応触媒であったと仮定している。しかし、ここ数年の研究(例えば参考文献2)で、最初の遺伝子系はRNAヌクレオチドとDNAヌクレオチドの両方を含んだ核酸分子に基づいていたが、その後徐々に自然に分離して現在のRNAとDNAに落ち着いた可能性が示唆された。今回、MRC分子生物学研究所(英国ケンブリッジ)およびヴロツワフ工科大学(ポーランド)のJianfeng Xuら3は、このRNA–DNA混合ワールドを裏付ける魅力的な実験結果をNature 2020年6月4日号60ページで報告した。

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翻訳:藤野正美

Nature ダイジェスト Vol. 17 No. 9

DOI: 10.1038/ndigest.2020.200933

原文

How DNA and RNA subunits might have formed to make the first genetic alphabet
  • Nature (2020-06-04) | DOI: 10.1038/d41586-020-01566-4
  • Kristian Le Vay & Hannes Mutschler
  • Kristian Le Vay & Hannes Mutschlerは、マックス・プランク生化学研究所(ドイツ・マルティンスリート)に所属。

参考文献

  1. Joyce, G. F. & Szostak, J. W. Cold Spring Harb. Perspect. Biol. 10, a034801 (2018).
  2. Gavette, J. V., Stoop, M., Hud, N. V. & Krishnamurthy, R. Angew. Chem. Int. Edn 55, 13204–13209 (2016).
  3. Xu, J. et al. Nature 582, 60–66 (2020).
  4. Powner, M. W., Gerland, B. & Sutherland, J. D. Nature 459, 239–242 (2009).
  5. Patel, B. H., Percivalle, C., Ritson, D. J., Duffy, C. D. & Sutherland, J. D. Nature Chem. 7, 301–307 (2015).
  6. Teichert, J. S., Kruse, F. M. & Trapp, O. Angew. Chem. Int. Edn 58, 9944–9947 (2019).
  7. Becker, S. et al. Science 366, 76–82 (2019).
  8. Yadav, M., Kumar, R. & Krishnamurthy, R. Chem. Rev. https://doi.org/10.1021/acs.chemrev.9b00546 (2020).
  9. Hein, J. E., Tse, E. & Blackmond, D. G. Nature Chem. 3, 704–706 (2011).