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スマホアプリのデータから見えてきたCOVID-19の特徴

Credit: Justin Paget/DigitalVision/Getty

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では嗅覚や味覚の喪失を症状の1つとして見なすべきであることが、英国で症状追跡アプリケーションを使った1回目の調査結果から示唆された。COVID-19と関連する現象には数多くの事例報告があるが、嗅覚を喪失する嗅覚障害は、世界保健機関(WHO)が設定したCOVID-19の症状リストには、2020年4月16日現在、入っていない(註:WHO が4月17日に公開した「Q&A on coronaviruses (COVID-19)」サイトでは、稀な症状の一例として嗅覚異常が挙げられている)。

英国で150万人以上が登録するスマートフォン・アプリケーション「COVID Symptom Tracker」は、ユーザーに毎日、COVID-19のものと考えられる症状を含めた健康情報を記録してもらう。このアプリで2020年3月24〜29日に収集されたデータの解析から、COVID-19のPCR検査で陽性だったユーザーは、COVID-19の症状があってもPCR検査で陰性だったユーザーに比べて、嗅覚障害を報告する率が3倍であることが分かった。PCR検査で陽性の579人のうち、嗅覚が失われたと報告したのは59%だったのに対して、陰性のユーザーでは1123人のうち18%だったのだ。これらの知見は4月7日にプレプリント(査読前の論文原稿)の形で報告された(C. Menni et al. Preprint at medRxiv http://doi.org/drkq; 2020)。同じ研究グループの最新(未発表)の図(「症状の追跡」参照)からも、同様の傾向が読み取れる。彼らは、嗅覚障害がある人は「自己隔離」すべきだと述べている。

PCR検査で陽性だったユーザーが報告した他のよくある症状は、発熱、しつこい咳、倦怠感、下痢、腹痛、食欲減退だった。

症状の追跡
研究チームの2020年4月7日の報告によれば、COVID-19のPCR検査において陽性で症状を報告したアプリユーザーのうち、約60%に嗅覚障害があった。 Credit: DATA SOURCE: COVID SYMPTOM TRACKER TEAM

翻訳:船田晶子

Nature ダイジェスト Vol. 17 No. 6

DOI: 10.1038/ndigest.2020.200609

原文

App data suggest loss of smell is a key symptom of coronavirus infection
  • Nature (2020-04-15) | DOI: 10.1038/d41586-020-01023-2