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三角形でトポロジカルなレーザー

テラヘルツ領域の周波数の電磁波(300GHzから10THz)は、イメージングや空港などのセキュリティ検査から大気科学、生物科学まで、多くの分野で応用されている。量子カスケードレーザーと呼ばれる半導体素子は、テラヘルツ放射を作るための最も小型で効率的な手段だ。量子カスケードレーザーでは、電子は、一連の離散的な量子エネルギー準位を経て段階的にエネルギーを失い、各段階で1つの光子を放出する1。しかし、量子カスケードレーザーは、あらゆる小型半導体レーザーと同じく、製造上の欠陥に敏感であり、レーザーの出力周波数が素子によって変化しやすい。南洋理工大学(シンガポール)オプトエレクトロニクス・バイオフォトニクスセンターのYongquan Zengらは今回、そうした不規則性に影響されないテラヘルツ量子カスケードレーザーの実現をNature 2020年2月13日号246ページで報告した2。この成果は、前例のない安定性と製造再現性を持つ、テラヘルツ領域のレーザーとオプトエレクトロニクス(光電子工学)への道を開く。

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翻訳:新庄直樹

Nature ダイジェスト Vol. 17 No. 5

DOI: 10.1038/ndigest.2020.200543

原文

Quantum cascade laser lives on the edge
  • Nature (2020-02-13) | DOI: 10.1038/d41586-020-00323-x
  • Sunil Mittal & Edo Waks
  • Sunil Mittal & Edo Waksは、メリーランド大学カレッジパーク校合同量子研究所(米国メリーランド州)に所属。

参考文献

  1. Faist, J. et al. Science 264, 553–556 (1994).
  2. Zeng, Y. et al. Nature 578, 246–250 (2020).
  3. Baba, T. Nature Photon. 2, 465–473 (2008).
  4. Hasan, M. Z. & Kane, C. L. Rev. Mod. Phys. 82, 3045–3067 (2010).
  5. Ozawa, T. et al. Rev. Mod. Phys. 91, 015006 (2019).
  6. Bandres, M. A. et al. Science 359, eaar4005 (2018).
  7. Bahari, B. et al. Science 358, 636–640 (2017).
  8. St-Jean, P. et al. Nature Photon. 11, 651–656 (2017).
  9. Ma, T. & Shvets, G. New J. Phys. 18, 025012 (2016).
  10. El-Ganainy, R. et al. Nature Phys. 14, 11–19 (2018).