太陽系の果ての雪だるまは赤かった
NASAのニューホライズンズ・ミッションで撮影されたカイパーベルト天体「アロコス」。 Credit: NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute/Roman Tkachenko
NASAのデータの分析から、かつて「2014 MU69」や「ウルティマ・トゥーレ」と呼ばれていた太陽系外縁天体「アロコス(Arrokoth)」が、赤っぽい色をした雪だるまのような天体であることが明らかになった。この写真は、太陽系の外縁部まで旅する先駆的なミッションに挑んでいるNASAの探査機ニューホライズンズが、2019年1月にアロコスから3538kmのところを通過した時に撮影したものだ。アロコスは冥王星よりも遠いカイパーベルトという極寒の領域にあり、人類がこれまでに接近撮影を行った太陽系天体の中で最も遠いものである(2019年4月号「ニューホライズンズが見た太陽系『最遠の天体』」参照)。
2月13日、ミッションに参加した科学者たちが、この岩石天体に関する新たな知見をScienceで発表した1,2,3。これらの研究により、アロコスの2つの丸い部分が見た目ほど平らではないことと、おそらく太陽系が誕生して間もない頃、少なくとも40億年以上前に穏やかに融合したことが示された。長径36kmのアロコスが非常に赤いことについては、宇宙線が表面に衝突して赤い有機分子を作り出した可能性が高いという。また、アロコスの表面には水の氷は存在しないが、メタノールの氷は豊富にあるようだ。これは、多くの太陽系外縁天体とは異なる特徴である。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(米国)の天文学者David Jewittは、アロコスはおそらく同様の軌道を持つカイパーベルト天体の典型だろうと考えているが、最終的な結論を出すにはもう1機、探査機を飛ばす必要があると言う。「実際に見るまでは、確実なところはわかりません」。
翻訳:三枝小夜子
Nature ダイジェスト Vol. 17 No. 4
DOI: 10.1038/ndigest.2020.200407
原文
Solar System’s distant snowman comes into sharp focus- Nature (2020-02-13) | DOI: 10.1038/d41586-020-00419-4
- Alexandra Witze
参考文献
- Spencer, J. R. et al. Science https://doi.org/10.1126/science.aay3999 (2020).
- Grundy, W. M. et al. Science https://doi.org/10.1126/science.aay3705 (2020).
- McKinnon, W. B. et al. Science https://doi.org/10.1126/science.aay6620 (2020).
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