Where I Work

Kerrie Mengersen

Nature ダイジェスト Vol. 17 No. 3 | doi : 10.1038/ndigest.2020.200352

原文:Nature (2019-10-28) | doi: 10.1038/d41586-019-03273-1 | Where I Work: Kerrie Mengersen

Kendall Powell

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VANESSA HUNTER

統計学者である私は、「バーチャル・ハビタット(仮想生息地)」の研究もしています。例えば、ジャガーが生息していそうな場所のモデル構築です。写真は、ペルーのイミリア湖で、先住民のシピボ族の村人が造った木製のカヌーに乗る私です。森の中を見て回るには、小型の船で行くのがいちばんです。森はとても暑くて鬱蒼としていて、危険が潜んでいるからです。

湖は巨木に囲まれ、水面は穏やかで平穏そうですが、空気は鳥の鳴き声の不協和音と蚊でいっぱいでした。ときどき、メンバーがナマケモノやカイマンを見つけて叫び声をあげました。私たちは早朝から外に出て、ジャガーの獲物になるカピバラ、ペッカリー、カメなどを見つけました。もちろんジャガーも探しました。少なくとも、鳴き声や足跡を捉えようとはしました。

ジャガーは個体数が少なく、人目を避けて行動するため、観察記録がほとんどありません。クイーンズランド工科大学の私のチームは、バーチャル・リアリティー(VR)を利用してジャガーの理解を深めようとしています。ジャガーが棲んでいそうな場所を選んで写真を撮り、これをVRの風景にして、ジャガーの専門家(そのエリアに詳しい地元の先住民や世界的な権威)に見てもらいます。彼らをジャングルに連れていく代わりに、ジャングルを彼らの所に持っていくのです。そして、「ジャガーがこのエリアに棲んだり、移動したり、狩りをしたりする可能性はどのくらいあるでしょうか?」と尋ねるのです。

没入型のVR環境は、私たちが統計モデルを構築する上で必要な情報を人々につぶさに思い出してもらったり、見つけ出してもらったりするのに役立ちます。そして、統計モデルでジャガーが歩いていそうな場所を予測します。これらは、保護区間を結ぶ「コリドー(回廊)」作りに取り組むペルーの保護活動家たちの指導に利用されます。

地元の人々はVRの風景から、ジャガーの獲物になる動物が主食にしている特定の果樹が重要だと教えてくれました。専門家の脳に隠れたこうしたデータ(知識)を取り出すには、彼らをジャングルの風景の中に連れていくしかないと私は考えています。

Kerrie Mengersenはクイーンズランド工科大学(オーストラリア・ブリスベン)の統計学者。

(翻訳:三枝小夜子)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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