Where I Work

Maria Josefa Verdugo

Nature ダイジェスト Vol. 17 No. 12 | doi : 10.1038/ndigest.2020.201252

原文:Nature (2020-03-30) | doi: 10.1038/d41586-020-00918-4 | Transfixed by the glow of Arctic ice under starlight

Chris Woolston

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ESTHER HORVATH

北極点から500kmほどしか離れていない北極海で掘削した海氷コアを扱っていると、足も、手の指も、顔も、全身が冷たくなります。気温は−35℃まで下がることがあります。ここまで寒いと、私の研究基地になっているドイツの砕氷船RVポーラーシュテルン号に今すぐ戻って、濡れたラテックス手袋を外して暖をとりたい、ということしか考えられなくなります。

そんな自分に、「私はまだ大丈夫」と言い聞かせるのです。もう1人の研究者が私に凍傷の兆候が出ていないかどうか注意深く見てくれていますし、私も彼女のことを見ています。クルーの1人はホッキョクグマの警戒に当たってくれています。私はどうにか落ち着きを取り戻して、自分の仕事である氷の温度と塩分濃度とメタン濃度の測定を終わらせます。私はドイツのブレーマーハーフェンにあるアルフレッド・ウェゲナー極地・海洋研究所で海洋地球化学の博士号研究を行っています。これらは、そのための測定なのです。

私はMOSAiC(北極気候研究のための学際的漂流観測)という遠征プロジェクトの一環で、2019年9月から12月までポーラーシュテルン号で過ごしました。極北は、気候研究における最大の未知領域の1つです。極北の気候を探る多国籍プロジェクトMOSAiCは、初の通年遠征として2019年9月から2020年9月まで実施されました。一度に船に乗り込むのは約60人の研究者と40人のクルーで、この小さなコミュニティーが大浮氷群と共に海を漂流していきます。写真は11月10日の昼下がりに撮影されたものですが、夜の時間が長い極夜の時期なので、太陽はとうに地平線の下です。

私はチリの出身で、寒さや雪や氷に馴染みはありませんでしたが、これらを受け入れることを学びました。自由時間には、ときどき防寒着を着込んで、友人やホッキョクグマの監視係と一緒に氷の上を短時間だけ散歩しました。私たちがいた海域はオーロラが見える緯度よりずっと北だったので、オーロラを見ることはできませんでしたが、星明かりや月明かりに照らされた氷が明るく輝き、ヘッドランプが不要なこともありました。

この壮大な遠征に参加できたのは本当に幸運でした。それは冒険であり、考えごとをたっぷりとできる時間でもありました。氷の上では時間の進み方が違うのです。

(翻訳:三枝小夜子)

Maria Josefa Verdugoは、アルフレッド・ウェゲナー極地・海洋研究所 (ドイツ・ブレーマーハーフェン)の海洋生物地球化学専攻博士課程学生

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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