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コウモリの大声は訴える

Nature ダイジェスト Vol. 17 No. 12 | doi : 10.1038/ndigest.2020.201215a

狩りに必要な反響定位音を出すのが追いつかなくなる恐れ。

コウモリは、人工の騒音の中を飛行する際、大きく叫ばなければならない。 | 拡大する

ALISBALB/ISTOCK/GETTY

コウモリは毎晩、安全なねぐらを離れて食物を探しに出なければならない。これにはエネルギーがいる。そもそも、狩りに費やしたエネルギーを賄うのに十分な量の昆虫を食べる必要がある。

コウモリは飛行と反響定位用の発声に同じ胸筋と腹筋を使っているので、飛行中に発声しても、飛んでいるだけの場合と比べて余分に消費するエネルギーはたいして多くないだろうと考えられてきた。だがNature Ecology & Evolution に発表された最近の研究結果は、この考え方に大きな疑問を投げ掛けている。

「静かに発声している場合なら、それらの想定は通用します」とライプニッツ動物園野生生物研究所(ドイツ)のShannon Currieは言う。だが「大声を出すと、エネルギー消費は非常に大きくなるのです」。

超音波ノイズが増加、獲物は減少

Currieらはベルリンの市街地で捕獲した9匹のナトゥージウス・アブラコウモリについて代謝と反響定位音の強度を測定した(実験後に解放)。風洞装置中を飛行中に通常の環境音を流した場合、コウモリの鳴き声の大きさは113デシベルだった。だが超音波のノイズを追加すると128デシベルの大声で“叫び”、約30倍のエネルギーを要したという。コウモリの鳴き声は人間には聞こえないが、この音量の増大幅は近くにあるチェーンソーの音とジェットエンジンの爆音の差に相当すると、コウモリに詳しいウィニペグ大学(カナダ)の生物学者Craig Willis(この研究には加わっていない)は言う。

コウモリがこの劇的な音量増で消費される追加エネルギーを賄うには、昆虫を毎晩0.5g(体重の約7%)余分に食べる必要がある。「人間に引き直すとロースト七面鳥のごちそうにあたり、これはおおごとです」とWillisは言う。

(翻訳協力:粟木瑞穂)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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