Where I Work

Christin Khan

Nature ダイジェスト Vol. 17 No. 11 | doi : 10.1038/ndigest.2020.201152

原文:Nature (2020-06-23) | doi: 10.1038/d41586-020-01814-7 | Flying low and slow over endangered whales

Madeline Bodin

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Allison Henry/NOAA/NEFSC

ラッキーなことに、仕事の日は、他の2人の科学者と2人のパイロットと一緒に小型飛行機に乗り、北大西洋のセミクジラ(Eubalaena glacialis)を探していることが多いです。セミクジラを見つけたら頭上を飛行して写真を撮ります。真上から撮影することで個体を識別できるのです。これだけ希少な種になると、個体識別は重要です。セミクジラに関するデータを共有している北大西洋セミクジラコンソーシアム(North Atlantic Right Whale Consortium;NARWC)の見積もりでは、現時点で生息しているセミクジラはわずか409頭です。

飛行機はデ・ハビランド・カナダ社のツイン・オッターで、米国海洋大気庁(NOAA)が所有するものです。クジラを見つけて写真を撮るためには海の上を「低く」「ゆっくり」飛ぶ必要があるので、飛行高度は305mという低さです。また、この飛行機の設計上、時速185kmでの低速飛行が可能です。写真の私は、高翼の下の半球状の窓から外を見ていますが、ここからの眺めは最高です。

私たちが収集する写真とデータは、NARWCの研究者の間で共有され、広く利用されます。保護されている集合海域外で3頭以上のクジラが一緒にいるのを見つけたら、危険な衝突を回避するため速度を落とすよう船舶に警告を発します。

私自身は飛行中に緊急事態に遭遇したことはありませんが、悲劇に見舞われた研究者仲間はいます。2009年に第一子を出産する前には、自分の仕事の危険性について考えました。パンデミックの影響で2020 年3月16日から飛行していません。航空調査の再開について話し合うときには、その危険性について同じように考えています。私の行動によって危険にさらされるのは私だけではありません。家族や仲間も巻き込んでしまう恐れがあります。

私はキャリアの全てをセミクジラに捧げてきました。彼らが絶滅に向かっていくのをただ見ているのは非常につらいです。危険を避けて息を潜めているのは性に合いません。人間による害からクジラを守るために、精一杯生きたいです。

(翻訳:三枝小夜子)

Christin Khanは、米国海洋大気庁北東水産科学センター(米国マサチューセッツ州ウッズホール)の漁業生物学者。

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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