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学術界サバイバル術入門 — 査読をする①:査読依頼を引き受ける

Nature ダイジェスト Vol. 17 No. 11 | doi : 10.1038/ndigest.2020.201121

査読依頼が来たらどうすればよいでしょう? 有能な査読者になるための3つの重要な側面を、これから数回に分けてお話しします。

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学術界サバイバル術入門
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学術界で成功するためのワークショップ

有能な査読者となることに焦点を合わせたシリーズの第1回にようこそ! Adrian Mulliganらは2013年、研究者の86%は喜んで査読を行っているが、56%は査読方法に関する指導がないと感じていて、68%が正式なトレーニングが重要と思っていることを明らかにしました1

こうした要求に応えて、査読トレーニングのワークショップがオンライン2-6や対面7で行われています。Nature ダイジェスト のこのシリーズでは、有能な査読者になるための3つの重要な側面、①査読依頼を引き受ける、②効率的に論文を査読する方法、③建設的で有用な査読報告の書き方について述べ、皆さんのお役に立てればと思います。

編集者にとっての査読の重要性

編集者として最も難しい挑戦は何ですかと尋ねられたら、ほとんどの学術誌の編集者はおそらく、投稿論文の質を高めることか、投稿論文に適切な査読者を見つけることのどちらかを挙げるでしょう。そうなのです、良い査読者を見つけるのは簡単ではないのです! 編集者の多くは自社の査読者データベースや、PubMedやWeb of Scienceなどのオンラインデータベースを当たるか、論文著者の添え状に書かれている「推薦する査読者」を検討します。その際、以下の4つの評価基準で査読者候補を吟味します。

1 論文の主題についての専門知識

その研究者は論文のトピックを理解し、その分野における現在の重要性あるいは関連性を判断できる適切な専門知識を持っているか、まず評価します。その研究者がそのトピックで論文を何篇か発表しているなら、主題に関する専門知識をおそらく持っていると編集者は考えることでしょう。

2 技術的な専門知識

編集者は、査読者候補が投稿した論文を基に、査読してほしい論文の研究デザインや技術、分析を理解できるかどうかを評価する必要があります。これは主題についての専門知識と同様に重要ですが、はるかに大きな難題です。ある論文で同様の技術が使用されていたとしても、その論文著者全員が、それら全ての技術に関する専門知識を持っているとは限らないからです。編集者がその査読者候補の研究に詳しいならば別ですが、一般にこれは編集者にとって明確でないことが多いのです。

3 利益相反(Conflict of interest)

編集者は、客観的かつ公正に査読が行われることを望んでいます。ですから、肯定的または否定的な影響を及ぼさない査読者を選ぶことを目指しています。同僚、友人、共同研究者など、肯定的に偏った見方をする人々は、論文採択の可能性を高めたいので、論文原稿を批判的に評価しない可能性があります。競争相手の場合は、否定的な偏見を持ち、その原稿が不採択になったり、発表が遅れたりすることを望んで、ひどく批判的あるいは不公平なコメントを書く場合があります。どちらも学術誌のためになりませんし、そして何より、彼らはその分野の進歩に悪影響を与えます。

4 査読者の経験

査読者候補が、特定のトピックに関して影響力のある論文を多く発表している研究者であっても、論文原稿を適切に評価して有用な報告を書くやり方を知っているかどうかは別問題です。編集者はどうしたらそれを確信できるでしょうか? その研究者が以前に自分の学術誌で査読をしたことがあれば別ですが、編集者にもそれは分かりません。だからこそ多くの編集者は、過去に査読者として真価を発揮した人に何度も査読を依頼します。Publons8などのサイトは査読者経験を評価するのに役立ちますが、研究者の大半はこうしたデータベースに載っていないので、これもまた、ほとんどの編集者にとって確実なものではないのです。

というわけで、査読者を選ぶのは簡単ではありません。編集者は助けを必要としています。そしてあなたは、彼らを助けられる最良の立場にいるのです。

さて、査読者選定に関する編集者の苦労についてお話しするのはここまでにして、査読者候補であるあなたに向けたアドバイスに移りましょう。

なぜ査読を引き受けるべきなのか?

研究に忙しいあなたが、ぎっしり詰まったスケジュールの中から時間を見つけて、他人の論文発表を助けるために査読を行うのはなぜでしょうか? しかも、この作業は通常、無償ですし、謝辞にあなたの名前が書かれることもありません。それでも、別の研究者の論文原稿の査読にあなたが応じるべき理由がいくつかあります。

研究者が査読依頼に応じる最も一般的な理由の1つは、その論文の発表前に自分の分野の最新の進歩を知る興奮です。研究者なら誰もが好奇心をかき立てられます。この好奇心こそ、査読者となる重要な動機の1つです! 査読は自分の批判的思考や文章力に磨きをかける助けになるという理由もよく挙がります。研究の結果や解釈を伝えるために、他の研究者が研究をどう設計し、技術や分析を駆使しているかを評価することで、あなたは自身の研究を改良して、より優れた論文を書く方法を見つけられるでしょう。

最後に、査読者になることは、その学術誌とその分野におけるあなたの評判を確立するのに良い方法です。編集者は、印象的な査読を行って雑誌の編集を助けてくれた研究者のことを覚えているものです。こうした関係を築くと、さらに査読依頼が来るようになり、論文投稿を頼まれたり、その学術誌の編集委員会へ招待されたりといったことにつながる可能性があります。それから、ほとんどの編集者が自身も活発に研究を行っていることも忘れないでください。つまり、査読者として関係を築くことは、その分野におけるあなたの専門性や信用を高め、ひいては新しい共同研究や仕事上の良好な付き合いにもつながり得るのです。

査読依頼を受ける、または断るタイミングは?

あなたは、「最近投稿された論文原稿の査読を検討してほしい」というメールを学術誌の編集者から受け取りました。受けるべきでしょうか? 断るべきでしょうか? この決定を下す前に、自分自身にいくつか質問する必要があります。

真っ先に来る疑問は、自分にはその資格があるかどうかです。あなたには、その論文原稿を評価するに足る、主題に関する専門知識や技術的知識がありますか? 研究者が査読依頼を断る一番の理由は、その論文原稿の主題が自分の守備範囲外だと感じることです9。編集者が適切な査読者を見つけるのは難しいと前述したように、この統計結果は驚くべきものではありません。だから編集者は、あなたに決定を委ねるのです。つまり彼らは、あなた自身にあなたの専門知識を評価し、この論文原稿の査読に本当に適切な人物であると保証してほしいと考えているわけです。

時には、主題に関する専門知識はあるが、いくつかの技術には詳しくない、ということもあるでしょう。それについては心配無用です。あなたが査読者として適切か不安に感じていることを編集者に率直に伝えれば、彼らは追加的内容をカバーするために別の査読者にも依頼する必要があるかどうかを検討できます。編集者と査読者は、その分野において最高かつより意味深い研究だけが確実に発表されるために1つのチームとして作業するということを、常に頭に置いておきましょう。協力し合うことが肝要なのです!

もし、あなたにその資格がないのに論文原稿を査読したらどうなるでしょうか? 例えば、将来論文を発表したいと考えている学術誌から査読依頼が来たとしましょう。あなたは査読依頼を断らないかもしれません。しかしその場合、あなたの査読は徹底的でも、明確でも、建設的でもなく、役に立たない可能性が高いでしょう。まずこれで、あなたが編集者に対して築き上げようとしている評判が崩れてしまいます。第2に、あなたの査読報告は編集者の役に立たないため、論文の発表がさらに遅れることになるでしょう。これでは査読する価値がありません。

ですから慎重に、主題と技術に関する自分の専門知識についてよく考えてください。自分は適任でないと判断したら、丁寧に依頼を断り、編集者に理由を説明しましょう。より適任である人を知っているなら、必ず編集者に紹介して、彼らが別の査読者候補を見つけやすいようにしましょう。

次に考慮すべき重要事項は時間です。ほとんどの査読者の場合、評価を行って報告を書くのに最長で10時間程度です9。ですから、依頼が来たら必ずカレンダーを確認しましょう。これから2~3週の間、査読に最長で10時間割けますか? もしできないなら依頼を断りましょう。交付金申請の締め切り、会議、学会、休暇、自分自身の論文執筆、研究など、時間を必要とすることへの配慮を忘れないこと。そして、査読期間が多くは4週間であるのに、私が「これから2~3週間」と言うのはなぜでしょう。何かが突然スケジュールに入ってきて、締め切りに間に合わなくなることがよくあります。早めに行う計画を立て、締め切り直前まで査読を先送りするのは絶対にやめましょう!

また、査読は1回行えば終わりというものではないことも覚えておきましょう。論文が採択/不採択になるまで、査読者としてのあなたの責務は続きます。査読を2〜3回行う可能性もあります。この先数カ月にわたって時間を割くことができますか? 修正された論文原稿を受け取った査読者が「査読する時間がありません」と答えたら、編集者は非常に困ります。そうなったら編集者はどうするでしょうか? 2人の査読者と先に進めるのか? 3番目の新しい査読者を探すのか? どちらの場合も厄介なことになります。ですから、数カ月先のことまで考慮しましょう。学術誌の中には査読回数を決めている所もあります。分からないことがあれば、編集者に尋ねることをお勧めします。

最後に、前述した「利益相反」についても注意しましょう。ある論文を評価するときにあなたの判断を曇らせたり、偏見を抱くことにつながったりするような、著者との関係について心当たりはありませんか? そういう関係にあったとしても、その論文原稿を客観的に批評できると感じるなら、必ず編集者にそれを伝えましょう。そうすれば編集者が、あなたが査読者として適切かどうかを判断するでしょう。もしも偏見を生じる可能性があると感じるなら、依頼を丁寧に断り、その理由を述べることが最善の方法です。

最終的に、編集者と研究者は協力し合って、提出された論文原稿が発表前に最良の査読を受けることを保証しなくてはなりません。編集者は査読者候補の選択においてベストを尽くします。あなたもまた、編集者が確実に適切な選択ができるように協力しなくてはなりません。

次回は、2021年1月号の予定です。

(翻訳:古川奈々子)

ジェフリー・ローベンズ(Jeffrey Robens)

Nature Research Academies 筆頭講師。自然科学分野で多数の論文発表と受賞の経験を持つ研究者でもある。


Nature Research Academies は、科学コミュニケーションの基礎から、よりインパクトの高い発表戦略、研究データの原則や、助成金作成、求人応募、臨床研究方法論ほか、学術界で成功するためのノウハウを提供するワークショップです。

参考文献

  1. Mulligan, A. et al. J. Am. Soci. Info. Sci. Tech. 64, 132–161 (2013).
  2. masterclasses.nature.com/focus-on-peer-review-online-course/16605550
  3. www.bmj.com/about-bmj/resources-reviewers/training-materials
  4. authorservices.wiley.com/Reviewers/journal-reviewers/becoming-a-reviewer.html/peer-review-training.html
  5. publons.com/community/academy
  6. researcheracademy.elsevier.com/navigating-peer-review/certified-peer-reviewer-course
  7. partnerships.nature.com/product/nature-research-academies-peer-reviewer-workshops
  8. publons.com/about/home
  9. wordpress-398250-1278369.cloudwaysapps.com/wp-content/uploads/2016/12/Peer_Review_Survey.pdf

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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