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完璧な推薦状を書くための秘訣

Nature ダイジェスト Vol. 17 No. 10 | doi : 10.1038/ndigest.2020.201032

原文:Nature (2020-07-20) | doi: 10.1038/d41586-020-02186-8 | Writing the perfect recommendation letter

Interviews by Andy Tay

時間に追われる教員や研究者たちは、候補者の役に立つ推薦状をこのようにして書いている。

3人の科学者が、優れた推薦状を書くためのヒントを提供してくれた。 | 拡大する

Lumina Images/Getty

大学生は大学院入学審査のために、大学院生やポスドク研究者はフェローシップや仕事に応募するために、そして上席研究者はしばしば賞や昇進のために推薦状が必要になる。しかし、候補者一人一人に的を絞った有益な推薦状を書くには、時間がかかる場合がある。特に助成金申請や論文執筆、教育や学生指導に忙しい教員や研究者にとっては。さらに、自分の元部下や学生のキャリアアップに役立ち、かつ、いかにもありきたりな内容ではない「オリジナルな推薦状」を書くのに苦労する人もいるかもしれない。

Nature は3人の経験豊富な教授にインタビューし、完璧な推薦状を書くためのヒントを聞いた。

プロセスを作り、学生に伝えるElizabeth Nanceワシントン大学(米国シアトル)の化学工学助教授

私は5年間にわたり、助教授として、年間15~20人の学生のために推薦状を書いてきた。それぞれの手紙を個別化するために、かなりの時間を費やしている。

手紙を準備する際、私は明確なプロセスに従う。そのプロセスの概略は私のウェブサイトに掲載してあり、学生たちにはっきりと示している。まず、推薦状の締め切りの最低4週間前までには、学生は私に推薦状を書いてほしいという意思を伝えなければならない。といっても、必ずしも承諾するとは限らない。説得力のある推薦状が書けるほど、相手のことを知っていない可能性があるからだ。私が書くことに同意したら、学生たちは最新のCV、応募用の小論文の草稿、そして、応募理由を書いたメモを私に送らなければならない。

どの推薦状でも、採用の助けになりそうなときには、教室や実験室の外での応募者個人の特色について述べるようにしている。例えば、イベントを組織するのが得意な学生は、プロジェクト運営力と問題解決能力があることが分かる。そうした能力には、ただ授業の課題をこなす以上のものが求められる。ほとんどの授業の課題はやり方が決まっているからだ。私は、学生の生活のこうした局面を捉えることが重要で、学問や技術面での実績を強調するのと同等に扱われるべきだと考えている。

私は時折、自分の研究室の大学院生メンターだけでなく、教員仲間にも、候補者に関するコメントや実例などがあれば聞かせてほしいと尋ねたりもする。

学生たちに「推薦状を書いてもらうためにはプロセスに従わなければならず、事前にそのプロセスについて熟知しておく必要がある」と知らせておくことは、これまで役に立っている。これによって、私は学生のために良い推薦状を書き上げることができているし、インパクトのある推薦状を私が書くためには何が必要なのかを彼らに明確に伝えることができていると思う。

推薦状に何が期待されているかを踏まえて書くAlex Shalekマサチューセッツ工科大学(米国ケンブリッジ)の化学准教授

良い推薦状を書くには、読み手を意識することが肝要だ。仕事のポジションに応募したり、学術機関への入学を志願したりしている学生のために推薦状を書いているとき、私は彼らの強みや成績や将来性を強調するだけではなく、なぜ彼らが適格者となり得るか、という感触を伝えるようにしている。同僚を賞に推薦する際には、それぞれの機会に応じて、私は彼らの業績やその分野への彼らの貢献をより強く押し出すか、または指導者としての実績をより大きく強調するかして、審査委員会の判断の助けとなるように手紙を書くだろう。良い推薦状を書くには、その推薦の目的を考慮するべきであり、推薦状を読む人々が適切な情報を得る助けになるような内容を提供すべきだと感じている。

推薦状を書くことに同意する前に、私はその学生や同僚と心を割って話をし、私にどんなことが書けるか、あるいは書けないかを知ってもらうようにしている。例えば、大学院入学を希望している学生のための推薦状を書くとき、その学生は私の授業を取っていたが、授業以外での接触は限られていたとすると、授業の成績については明確にコメントできるが、彼らの性格や研究業績については、根拠が限られているため、コメントできないとはっきりと言う。私にとって、現在および将来において私の推薦状を読む人々との信頼感を培うために重要なことだ。

学生や同僚と、彼らが推薦状にどんなことを書いてほしいかについて率直に話し合っておくと、彼らの応募書類一式(これには個人的な主張、追加の文書、他の推薦状などが含まれることがある)の内での私の推薦状の役割、つまり私の推薦状がどのように読まれることを彼らが期待しているかを理解する助けになる。可能であるときはいつも、私は自分の推薦状が、応募者それぞれに応じたものであり、他の文書では書かれなかった部分を埋める内容であってほしいと考えている。こうした率直な会話で、それぞれの人の野心や目標が明らかになり、学生であれば、彼らをこれから先もっと深いレベルで指導するための助けとなり、同僚であれば、将来彼らとより親密で豊かな交流が可能になる。

説得力のある例を示して 詳細なストーリーを語るDino Di Carloカリフォルニア大学ロサンゼルス校(米国)の生物工学教授

何年にもわたって、大学院生、ポスドク、そして若手大学教員の推薦状を読んできて、私は推薦状に説得力を持たせるテクニックがあることに気付いた。そうした技術の1つは、候補者の長所を強調する際に、標準的な「リスト」形式を使わずに、ストーリーを用いるというものだ。推薦状に書かれている候補者は誰もが似たり寄ったりで、列記された同じような長所を持つように感じられる。だから、応募者の総合能力を例証するストーリーが加えられていると、がぜん真実味を帯びてくる。

例えば私は、単に「応募者Aは講演のスキルが非常に高い」と書かずに、「講演の際の応募者Aの巧みな話術は注目に値するものであり、他のグループの人から、別の機会にパブリックスピーキングのトレーニングセッションをしてほしいと頼まれるほどである」と書くだろう。そして、「応募者Bは優れた共同研究者である」と述べるだけでは、「応募者Bは5つの異なるグループとの共同研究を指揮し、2つの共同研究助成金獲得につながった」と書くほどの重みはない。つまり、詳しい情報を含む推薦状は、より価値があるということだ。そこで、私は書き始める前に、まず、候補者の主要な業績や長所を2つか3つ思い浮かべ、それらに基づいてストーリーを語る。

ストーリーを語る際に、私は太字やアンダーラインを使用して重要な点や業績を強調する。こうすることで、読み手は、多くの複雑かつ微妙なニュアンスを含む考えを覚えておく必要がなくなり、重要な点を容易に参照できる。例えば、教職に応募している候補者のためには、通常私は、助成金申請における彼らの経験を強調する。

推薦状を書くのは、とても楽しい。それによって、教え子との交流を回顧したり、一緒に過ごした創造的な時間を思い出したりするだけでなく、彼らの将来の仕事を後押しすることができる。それはまるで、アルバムのページを次々にめくりながら、一番いい写真を選び出すような楽しさだ。間違いなく、ノスタルジックな気持ちになるだろう。

(翻訳:古川奈々子)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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