Editorial

Nature の新しい姿

Credit: Nature

Nature のデザインが2019年10月24日号から変わりました。私たちは、「研究者の役に立ち、科学知識を世界中に広める」という使命を果たすのに必要な新たなデザインを、1年以上かけて練り上げてきました。150周年を迎えるNature が新たな明確さとスタイルで科学を伝えるために、大いに必要とされていたアップデートです。読者の皆さんにも気に入ってもらえることを願っています。

Nature は、過去に何度かデザインを変えてきましたが、いずれの場合も同じ前提に基づいていました。読者は、物理的な紙に動かないインキで印刷された媒体を介して私たちのコンテンツに目を通す、ということです。この前提は、もはや成り立ちません。だからこそ私たちは、内容が明確で読者を引きつける印刷版を制作しつつ、読者の大多数が利用する我々のデジタルプラットフォームでコンテンツを読むのに適した新しいデザインを練り上げたのです。

本誌のテキストが読みづらいこと、そして、それぞれの研究論文で複雑なデータセットを正当に扱う必要性がますます高まっていることが、読者アンケートや読者の面接調査から明らかになりました。こうしたニーズを満たし、さまざまな形式のコンテンツに適用できる魅力的なデザインを考え出すのは難題だと認識していましたが、著名なエディトリアルデザイナーであるマーク・ポーター(Mark Porter)氏との共同作業においてその発想に耳を傾け、いろいろと試した上で、このたびのお披露目となりました。

読者の皆さんが最初に気付くのは、Nature のロゴの変化かもしれません(ロゴのデザイン変更は11回目です)。過去半世紀にわたって使用してきた小文字で始まるnatureが、装いを新たに再出発しました。新しくなったのはロゴだけではありません。本誌のジャーナルフォントとしてHardingというカスタム書体が設計されました。Hardingという名称は、インスピレーションにあふれ、42歳の若さで亡くなるまで神経遺伝学に重要な貢献をした神経学研究所(英国ロンドン)のアニタ・ハーディング(Anita Harding)氏にちなんでいます。

私たちは、Commercial Type社のデザイナーやタイポグラファーたちとの共同作業で、Nature の全体的なデザイン言語に組み込むことを目的とした書体を数カ月かけて設計しました。Nature のデザイン言語は、20世紀中頃のスイスのモダニストによる合理的デザインから着想を得たものです。モダニスト(国際主義と呼ばれることもある)は、第二次世界大戦前と大戦中の国家主義的なデザイン動向に対して登場しました。モダニストは、「グラフィックデザインは数学的グリッドに従うべき」という考え方を推進し、その結果、デザイナーは秩序らしきものに従って書体と画像を配置できるようになったと、Nature のクリエイティブディレクターであるKelly Krauseは説明します(Nature 2019年10月24日号476ページ参照)。

デザインにこうした要素を取り入れれば、Nature 印刷版のテキストは読みやすくなると考えられます。また読者の皆さんがセクション間を進みやすいように、構成とラベルの一部を微調整しました。そして、Nature の全ての研究コンテンツはArticle形式で出版され、短縮版のLetter形式は廃止されました。これは、オンライン版の論文に裏付けデータセットを組み込む目的で2013年に創設されたExtended Dataセクションに続く変更で、これによってNature に掲載される全ての研究論文に同等の注目が集まるようになります。

また、Nature 印刷版の終わりの方に「Where I work」が加わりました。研究者と研究に関係する人々を紹介するこのシリーズは、一人称で語られるストーリーと、研究や仕事や思考を行う場での印象的な写真を組み合わせた記事を通し、世界中のあらゆる年代の人々の過ごし方を垣間見られるようにすることが狙いです。なお、Nature のSFシリーズである「Futures」は、オンライン版にて掲載を継続します。

Nature のデザインを手直しするプロセスは、まだ終わっていません。Nature オンライン版およびNatureブランド全学術誌の印刷版とオンライン版には、今後1年間にさらに多くの変更が施されます。

Nature にとって、本物の科学を正確かつ明確に伝えることほど重要なことはありません。ちょっと粋で、想像力も働かせたNature の新しいデザインによって、それを実現していきたいと私たちは考えています。

翻訳:菊川要

Nature ダイジェスト Vol. 17 No. 1

DOI: 10.1038/ndigest.2020.200146

原文

A new look for Nature
  • Nature (2019-10-24) | DOI: 10.1038/d41586-019-03167-2