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小惑星の内部を探った「はやぶさ2」

Nature ダイジェスト Vol. 16 No. 9 | doi : 10.1038/ndigest.2019.190908

原文:Nature (2019-07-10) | doi: 10.1038/d41586-019-02136-z | Japanese spacecraft probes asteroid’s guts for first time

Davide Castelvecchi

日本の小惑星探査機「はやぶさ2」が、小惑星リュウグウの地下の物質を採取するためのタッチダウンを行った。

小惑星「リュウグウ」に向かって降下する「はやぶさ2」が撮影した写真。

JAXA

日本の小惑星探査ミッション「はやぶさ2」が、宇宙での一連の探査活動における最後の大仕事を成し遂げた。探査機は小惑星リュウグウに向かって降下し、日本時間の2019年7月11日午前10時18分、この年2回目のタッチダウン(接地)を行った。同年4月に小惑星の表面に衝突体を打ち込んで作っておいた人工クレーターから試料を採取するためだ。採取がうまくいけば(ミッションチームがミッションの成否を確認できるのはしばらく先のことになる)、史上初めて小惑星の地下から試料を採取できたことになる。

リュウグウ表面の試料は2019年2月に採取済みだ。この2つの戦利品を2020年に地球へ持ち帰ることができれば、リュウグウの表面と地下の組成の比較が可能になる。これにより、宇宙の過酷な環境への暴露、特に太陽光による加熱、太陽風、宇宙線への暴露が表面の化学的性質に及ぼす影響が明らかになるはずだ。NASAゴダード宇宙飛行センター(米国メリーランド州グリーンベルト)の惑星天文学者Lucy McFaddenは「多くの成果が期待できるミッションです」と言う。

2014年12月3日に打ち上げられた「はやぶさ2」は、2018年6月27日にリュウグウに到着した(2018年8月号「はやぶさ2が小惑星リュウグウに到着!」参照)。同年9月21日には搭載していた2台の小型ローバー「イブー」と「アウル」を表面に着陸させて磁気測定や化学測定を行い、地球に画像を送信した。「はやぶさ2」は2019年2月22日にリュウグウへの第1回のタッチダウンを行って表面の試料を採取し、4月5日には衝突装置から小惑星の表面に衝突体(質量2kgの銅の塊)を打ち込んで直径10mの人工クレーターを作り、小惑星の地下にある物質を露出させた。「はやぶさ2」は2019年末に分析用の試料を携えて地球への帰路につき、2020年末に地球に帰還する予定になっている。

「はやぶさ2」のミッションマネージャーである宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所(ISAS;神奈川県相模原市)の吉川真准教授はNatureに、第2回のタッチダウンで人工クレーターの中に降下するのは「リスクが大きい」ため、そのすぐ外側をタッチダウン地点として選んだと語った。

ローワン大学(米国ニュージャージー州グラスボロ)の宇宙化学者で、ミッションチームの共同研究者であるHarold Connollyは、「くぼみの中に入ってしまうと、本体から突き出しているソーラーパネルなどを気にしなければならず、表面に衝突してしまう恐れもあるからです」と言う。彼はNASAのオシリス・レックス(OSIRIS-REx)ミッションにも携わっている。2016年9月に打ち上げられたオシリス・レックスは、リュウグウによく似た小惑星ベンヌを探査し、その表面の試料を採取して地球に持ち帰るミッションで、すでに2018年12月にベンヌに到着して観測を開始していて、2020年に試料採取を行う予定である。2つのミッションは情報を交換し、部分的にスタッフを共有するなどして協力し合っている。

直径1kmの小惑星リュウグウは、岩石と塵が重力により緩やかに集まってできた、いわゆる「ラブルパイル(rubble-pile)天体」だ。リュウグウの密度の低さ(水よりわずかに高い程度)は、この小惑星がスカスカで、別の天体同士の衝突によって生成したデブリ(破片)が集積したものであることを示唆している、とConnollyは言う。

宇宙は真空なので試料を吸い込むわけにはいかないし、リュウグウにはほとんど重力がない。そこでチームは、小惑星の表面に着陸はせずに、接地と同時に質量5gのタンタル製の弾丸を表面に打ち込んで物質を飛び散らせ、サンプラーホーンに飛び込んできたものを捉えるという、独自の手法を考案した(「リュウグウ土産を獲得する」参照)。

リュウグウ土産を獲得する
日本の小惑星探査機「はやぶさ 2」は、小惑星の地下からの史上初の試料採取に向けた最後の大仕事を終えた。 | 拡大する

目標は合計1g前後の試料を地球に持ち帰ることだ。目標を達成できたかどうかはまだ分からない。答えが明らかになるのは、「はやぶさ2」が地球に帰還し、試料容器を開けて中を見た時だ。「はやぶさ2」が宇宙にいる間は、2回のタッチダウンでどれだけの量の試料を採取できたか、ミッションコントロールセンターにも知るすべはない、と吉川は言う。

物理学者たちは、「はやぶさ2」が持ち帰る試料が小惑星の謎の解明に役立つのではと期待している。例えば、リュウグウはかなり黒い色をしているが、その理由はまだ不明だ。リュウグウは太陽系で最も反射率の低い天体の1つで、既知のどの隕石よりも黒いのだが、「はやぶさ2」が作った人工クレーターの底に露出した物質はさらに黒い。JAXAの研究者たちは、4月に衝突体を打ち込んだことで物質が黒くなったのか、あるいは、クレーターの色の方がリュウグウの組成の本来の色で、表面の色は太陽放射によって薄くなっただけなのかを明らかにしたいと考えている。

リュウグウの表面は異常な数の岩に埋め尽くされている。ミッション科学者たちが2019年5月に発表した論文によると、リュウグウはこれまでに探査されたどの小惑星よりも単位表面積当たりの岩の数が多いという(T. Michikami et al. Icarus 331, 179–191; 2019)。この大量の岩によって、「はやぶさ2」のリュウグウ表面への接近とタッチダウンは非常に危険な作業となった。リュウグウは地球から遠く離れているため、「はやぶさ2」はリュウグウとの距離が100m以下になると自律的に着陸・離陸しなければならなかったからだ。

(翻訳:三枝小夜子)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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