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火星の地震を初観測!

Nature ダイジェスト Vol. 16 No. 7 | doi : 10.1038/ndigest.2019.190702

原文:Nature (2019-04-23) | doi: 10.1038/d41586-019-01330-3 | First ‘marsquake’ detected on red planet

Alexandra Witze

NASAの火星探査機「インサイト」が、史上初めて「火星の地震(marsquake)」を捉えた。

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FABIO BISPO/iStock/Getty Images Plus/Getty Images

2019年4月6日、インサイトは火星表面のかすかな震えを観測した。2018年11月に火星に着陸してから128火星日後のことだった(1火星日は約24.6時間)。月でも地震(月震)が観測されているが、地球以外の惑星で地震が観測されたのは、これが初めてだ。

震動は比較的弱く、アポロ計画の宇宙飛行士が1960年代末から1970年代初頭にかけて測定した月震と同程度だった。NASAのマーシャル宇宙飛行センター(米国アラバマ州ハンツビル)の惑星科学者Renee Weberは、火星の地震活動について、「地球と月の間のどこかには該当するだろうと思っていました。まだ始まったばかりですが、地球よりは月の地震にやや似ているようです」と言う。

今回の震動が火星の内部で発生したのか、それとも、火星の表面に隕石が衝突し、その衝撃がさざ波のように内部を伝わってきたのかは、まだはっきりしない。このミッションに従事するフランス国立航空宇宙高等学院(トゥールーズ)の科学者David Mimounは、シグナルは弱過ぎて地球では観測できないと言う。「非常に小さいシグナルなので、最初は地震なのか、それ以外の現象なのか、判断に迷いました」。

大地の音に耳をすます

火星の地震を聞き付けたのは、インサイトに搭載された地震計SEISである。フランスの研究チームが開発したSEISは、風よけのドームの中に3台の高感度センサーを収めた構造をしている。ミッション科学者は、以前、装置の上を吹き抜ける火星の風が引き起こした震動を観測したことがあった。しかし、4月6日のイベントの震動には地震の特徴があり、火星の内部から来たことを示していた。NASAのジェット推進研究所(米国カリフォルニア州パサデナ)の惑星地震学者Mark Panningは、「このシグナルは、過去に見たどのシグナルにも似ていません」と言う(2018年8月号「火星の内部構造に迫る探査機」参照))。

今回の震動が火星のどこで発生したかについては、まだ特定されていない。科学者たちがそれを突き止めることができれば、地震エネルギーが火星の内部をどのように伝わるかを追跡し、火星の内部構造の解明に着手することができる。それこそがインサイトの主要な目標だ(2018年8月号「火星の内部構造に迫る探査機」参照)。インサイトの活動予定期間は約1火星年(1火星年は約1.9年)である。「時間はあります」とPanningは言う。「私が理想とする宇宙では、火星ではひっきりなしに大地震が起きています」。

インサイトはこの他にも3月14日、4月10日、4月11日の3回、火星の地震と思われる震動を観測しているが、いずれも4月6日のイベントよりもさらに微弱で、発生源はまだ分かっていない。

インサイトは、火星の赤道付近のエリシウム平原で活動している。ミッション・コントローラーは現在、2月に地中に打ち込む途中でつかえてしまった熱プローブHP3を動かそうと悪戦苦闘している。ドイツの研究チームが開発したこのプローブは地中の温度を測定する予定だったが、浅いところから前進できなくなっているのだ。土壌の摩擦力が想定より小さかったことが原因とみられることから、NASAのチームは、インサイトのアームでプローブ付近の地面を押して摩擦力を大きくする方法を考えているという。

(翻訳:三枝小夜子)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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