ノックアウトよりもノックダウンの方が影響が出る訳
従来の知識からは、コードされたタンパク質を不活化する遺伝子改変(遺伝子を「ノックアウトする」こと)は、単に遺伝子の発現レベルを低下させるよりも重度の影響を及ぼすと考えられていた。しかし、この逆の場合が多く確認されており、実際に、ある1つの遺伝子のノックアウトでは影響が認識可能な形で表れないことがある一方で、その遺伝子の発現を低下させる「ノックダウン」では、大きな異常が引き起こされることがある1。この事象は、遺伝子のノックダウンに用いた試薬のオフターゲット効果、あるいは毒性効果が原因と分かることもある2が、常にそれで説明できるわけではなく3、その他の原因については分かっていなかった。このほど、このパラドックスに対する興味深い解答が、独立した2つの研究チームによりNature 2019年4月11日号で報告された。1つは、マックス・プランク心肺研究所(ドイツ・バートナウハイム)のDidier Y. R. Stainierが率いた研究4(193ページ)で、もう1つは、浙江大学(中国杭州市)のZhipeng Maら5(259ページ)による研究である。
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翻訳:三谷祐貴子
Nature ダイジェスト Vol. 16 No. 7
DOI: 10.1038/ndigest.2019.190732
原文
Genetic paradox explained by nonsense- Nature (2019-04-11) | DOI: 10.1038/d41586-019-00823-5
- Miles F. Wilkinson
- Miles F. Wilkinsonは、カリフォルニア大学サンディエゴ校(米国ラホヤ)に所属。
参考文献
- El-Brolosy, M. A. & Stainier, D. Y. R. PLoS Genet. 13, e1006780 (2017).
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- Ma, Z. et al. Nature 568, 259–263 (2019).
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