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TOOLBOX: 文献検索を高速化するプラグイン

Nature ダイジェスト Vol. 16 No. 6 | doi : 10.1038/ndigest.2019.190627

原文:Nature (2017-11-14) | doi: 10.1038/d41586-017-05922-9 | Need a paper? Get a plug-in

Dalmeet Singh Chawla

論文PDFを迅速に入手するのに役立つブラウザ・プラグインを紹介する。

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ILLUSTRATION BY THE PROJECT TWINS

2014年の分析によると、ウェブアクセス可能な状態にある英語の学術文献のうち約4分の1、すなわち、1億1400万編の論文中の約2700万編が、インターネットを介して無料で利用できるという(M. Khabsa and C. L. Giles PLoS ONE 9, e93949)。しかし、必要な論文へのアクセスに苦労する研究者は少なくない。例えば、多くの論文著者は公開リポジトリ上で論文を利用できるようにしているが、こうした論文を検索で探し出すのは困難だ。また、研究者は所属機関を通じて有料論文にアクセスできるが、自宅で別のネットワークを使うと、ペイウォールに阻まれてしまう。そうした場合、ツイッターの#icanhazpdfハッシュタグを利用して、論文PDFを入手してくれる人を探す手もある。中には、科学論文の「海賊サイト」Sci-Hubを利用して論文PDFを違法に入手する者もいる。

けれども近年、Unpaywall、Open Access Button、Lazy Scholar、Kopernioなどの文献検索ツールを利用する科学者が増えている。これらのツールを使えば、重複したデータソースを利用して、他のルートではアクセスできない/見つかりにくいオープンアクセス論文を発見し、取得できる。

有料論文を無料で入手する

カリフォルニア大学リバーサイド校(米国)の海洋生物学者Holly Bikは、キャンパス内にいるときには、カリフォルニア大学システムがライセンス購読する約7万2000誌の電子ジャーナル全てにアクセスできる。しかし、キャンパスの外に出ると状況は一変する。同大学はバーチャル・プライベート・ネットワーク(VPN)を通じて図書館資源のアクセスを提供しているが、Bikは、この接続がどうにも当てにならないと感じている。その上、一部のウェブサイトやネットワークはVPN接続をブロックしているため、出先では文献にアクセスしにくいことがあるという。

キャンパス内でも、図書館のコレクションには一部の巻しかないことが多く、数十年前の論文を探さなければならない人々にとって、非常に不便だ。「昔の論文はアイデアの宝庫かもしれないと考える研究者は多いのです。今の時代は、こうしたデータにアクセスできることが重要なのです」とBik。

科学政策立案者など、研究の周辺で働く人々の多くも、オープンアクセス誌や機関リポジトリ、プレプリントサーバーといった、ネットを介して無料で入手可能な論文しか利用できない。

Kopernioの設立者Peter Vincentは、アクセスできない研究論文の多さについて「進歩への根本的な障壁」であると、ロンドン大学インペリアルカレッジ(英国)のウェブサイトに2017年5月に掲載された記事で語っている。

Kopernioは、アクセス可能な有料論文PDFを探す手間を省いてくれる無料のブラウザ・プラグインで、ユーザーが合法的に論文を利用できるウェブページ(オープンアクセス出版社やプレプリント・アーカイブ、所属機関が購読する学術誌)にたどり着くと、ツールボタンがサイト上に表示され、PDFが入手できる場合はボタンをクリックとダウンロードされる。このツールは、論文の約80%においてPDFを探し出すことができると、Kopernioの共同設立者であるBen Kaubeは言う。彼はKopernio設立当時、ロンドン大学インペリアルカレッジで物理学を専攻する博士課程学生であった。

Kopernioは2017年4月、Canary Haz(#icanhazpdfに由来)というブラウザ・プラグインとして公開された。ユーザーが所属する大学のログイン証明書をKopernioに登録すれば、キャンパス外で作業をする人はVPNなしでも図書館資源にアクセス可能になる。

同大学で合成生物学を専攻する博士課程学生Barney Walkerは、Kopernioをよく利用している。彼によると、一部の出版社のサイトは、所属機関が購読契約を結んでいても論文へのアクセスが困難なことがあるという。キャンパス外で作業をしているときには特に、何度もログインを要請される。「Kopernioはこの部分を引き受け、ワンクリックでさまざまな出版社にアクセスさせてくれるのです」とWalker。

現在Kopernioは2000以上の機関に15万人以上のユーザーを持っている。すでに2万以上の学術誌と1000以上のライブラリーをサポートしているが、毎週のようにその数を増やしている。Kopernioには「ロッカー」機能があり、ユーザーがアクセスした論文PDFは自動的にここに保存され、いつでも論文を読み返すことができる。現在はWeb of Science、Google Scholar、PubMedをはじめとする2万以上のサイトと連携していて、それぞれの検索結果に「View PDF」ボタンを表示している。さらに、新規Kopernioユーザーを招待・登録したユーザーは、ロッカーに保存したPDFをDropboxにも自動的に保存する機能や、より大容量のロッカーなどを備えたKopernio Premiumというバージョンを無料で利用できる。

機能の拡張

Kopernioは最初の文献検索ツールではない。よく知られているものとしてはUnpaywallがあり、世界中に20万人以上のアクティブユーザーがいて、1日当たり100万回近いリクエストを受けている。Bikもそのユーザーの1人だ。

Unpaywallも、オープンアクセス論文のPDF検索を容易にするブラウザ拡張機能で、探し当てた論文が入手可能な場合、カギアイコンが灰色から緑に変わり「解錠」される。Unpaywallは、そのデータのほとんどを、デジタルオブジェクト識別子(DOI)を付与された9000万編以上の論文のオープンバージョンのデータベースoaDOIから取得している。UnpaywallもoaDOIも、非営利法人インパクトストーリー(Impactstory;カナダ・バンクーバー)を共同設立したJason PriemとHeather Piwowarによって開発された(訳注:現在はoaDOIという名称は使われておらず、これを含めた文献検索システム全体がUnpaywallと呼ばれる)。2人が2017年8月に発表した研究論文によると、合法的に無料で入手できる論文を発見するのに要する時間がUnpaywallにより従来の半分になるという(H. Piwowar et al. PeerJ Preprints 5, e3119v1; 2017)。

2013年に公開されたOpen Access Buttonというツールには、プログラムが論文(またはその基礎にあるデータ)を発見できなかった場合、論文の共有を著者にメールでリクエストする機能がある。同じ年に公開されたLazy Scholarは、学術誌のインパクトファクターなどの指標をユーザーに示し、関連した論文も提案してくれる。

各種文献検索ツールが使用するデータソースはかなり重複しているため、アクセスできる論文も重複している。データソースには、Web of Science、PubMed Central、Europe PMC、Google Scholarの他、6000以上のソースから1億4000編万以上の論文を集めたBielefeld Academic Search Engine(BASE)などがある。

これらのツールは、開発者が「合法的に入手できる論文だけを取得する」と請け合っている点で、Sci-Hubのような違法サイトとは異なる。だが、一部の出版社の懸念を払拭するには至っていない。複数の有料学術誌を発行している米国化学会(ワシントンD.C.)の広報担当者Glenn Ruskinは、Unpaywallを名指しして、「知的財産権を尊重するコンテンツ共有サイトにユーザーを誘導するように、適切な配慮をしなければならない」と指摘している。Priemはこれに応えて、自分が開発するツールは出版社が問題視するソースを除外するようになっており、そうした問題サイトに関する指摘は歓迎すると述べている。

また、シュプリンガー・ネイチャーをはじめとする他の出版社も、科学者が学術誌に収められた論文にアクセスし、それを共有できるソフトウエアを独自に開発して対応に努めている。

科学者はそうしたツールを必要としている。サイエンス-メトリクス社(Science- Metrix;カナダ・モントリオール)の最高責任者であるÉric Archambaultが言うように、科学者は「論文を探すことではなく読むことに時間を使わなければならない」からだ。

(翻訳:三枝小夜子)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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