死に至るリスクが高く、日本に100万人以上の患者がいるとされる脳血管障害。そのうち約75%は、脳の血流が途絶えて神経細胞が死に至る脳梗塞だ。現在のところ、治療は発症後、間もない急性期のみで、それを逃すと予後が厳しくなる。免疫学の立場から脳梗塞による炎症の惹起や収束のメカニズムを検討してきた慶應義塾大学医学部 微生物学・免疫学教室の吉村昭彦教授と伊藤美菜子講師は、慢性期になると脳に制御性T細胞が集積すること、それらの細胞が自らのセロトニン受容体などを介して増殖・活性化し、神経症状の改善に寄与することを突き止めた。
–– 脳梗塞と炎症について新たな成果を上げられました。
吉村: 脳梗塞後に起きる脳内の免疫反応について、マウスを用いた研究を10年以上続けています。これまでに、脳梗塞後1週間以内に起きる自然免疫系の炎症プロセスを明らかにしてきました1-4。今回は、炎症反応が収まるとされている脳梗塞発症後1〜2週間目以降の慢性期を対象とした解析を行い、この時期に脳内で制御性T細胞(Treg)が機能していることを突き止めました5。脳でのTregの存在はこれまで知られていませんでした。
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Nature ダイジェスト Vol. 16 No. 5
DOI: 10.1038/ndigest.2019.190514