2019年5月号Volume 16 Number 5

フッ素化合物を追跡する

水も油もはじく有機フッ素化合物は、焦げ付かないフライパンからレインコート、消火剤まで、私たちの生活で大活躍だ。一方で、健康問題との関連が明らかになった一部は、国際的に使用が禁止されたり、曝露限界値が設けられたりした。その便利さ故、代替のフッ素化合物が続々と開発され、環境中に放出されているが、それらの構造は不明で、安全性評価は難航している。

Editorial

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Nature は、創刊号の出版から150年間、読者である研究者のコミュニティーとともに進化してきた。私たちは、これからも成長を続けていきたいと考えている。

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Publishing Academy

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News

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幹細胞移植によりHIVが寛解した最初の症例は偶然ではなかったことを示唆する、2人目の症例が報告された。HIV治療を切り開く突破口となる可能性がある。

多くの学術出版社は、「コアリションS」が提案する過激な実現計画「プランS」の進め方や規定は、オープンアクセスへの自分たちの取り組みをないがしろにするものだと訴える。

従来の3D印刷では平面の層を重ねて立体を作っていたが、このほど、光硬化性液体樹脂に光を照射することで、構造物全体を一度に作製する3Dプリンターが開発された。

近年、培養肉の開発に取り組むスタートアップ企業が数千万ドルの資金調達に成功しているが、学術研究は後れを取っている。

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News Feature

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Japanese Author

死に至るリスクが高く、日本に100万人以上の患者がいるとされる脳血管障害。そのうち約75%は、脳の血流が途絶えて神経細胞が死に至る脳梗塞だ。現在のところ、治療は発症後、間もない急性期のみで、それを逃すと予後が厳しくなる。免疫学の立場から脳梗塞による炎症の惹起や収束のメカニズムを検討してきた慶應義塾大学医学部 微生物学・免疫学教室の吉村昭彦教授と伊藤美菜子講師は、慢性期になると脳に制御性T細胞が集積すること、それらの細胞が自らのセロトニン受容体などを介して増殖・活性化し、神経症状の改善に寄与することを突き止めた。

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News & Views

レトロトランスポゾンと呼ばれるDNA塩基配列は、自身のコピーをゲノムの別の部位に再び組み込むことができるが、これはDNA損傷につながることがある。今回、この過程を阻害することで加齢に伴う健康の衰えを防げる可能性があることが、マウスでの研究で示された。

EMDR(眼球運動による脱感作および再処理法)と呼ばれる治療法は、外傷後ストレス症候群の症状を軽減するが、そのメカニズムは謎に包まれている。マウスを使った研究で、このアプローチの生物学的基盤に関する有望な手掛かりが得られた。

科学技術の流れを乱して革新をもたらす「破壊度」を引用数指標として用いることで、研究チームの規模と研究の影響度との間に新たな関係性が見いだされ、「大きなチーム」の科学を称賛する傾向に疑問が投げ掛けられた。

中性子や陽子の構造は、原子核内にあるときには変化していることが分かっている。この現象の原因は長く分からなかったが、今回、1つの説明を支持する決定的な実験データが得られた。この結果は、原子核物理学に幅広く影響するかもしれない。

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News Scan

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