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研究者のためのキャリアアップ術

科学者として積み上げた経験を生かせる仕事に就くための秘訣を、5人の科学者が伝授する。

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SOLSTOCK/GETTY

Nature ダイジェスト Vol. 16 No. 4 | doi : 10.1038/ndigest.2019.190424

原文:Nature (2018-12-19) | doi: 10.1038/d41586-018-07807-x | Seven steps to boost your research career in 2019

Chris Woolston

産業界への就職には履歴書の見直しをMARTIJN BIJKER研修会社From Science to Pharma 社創業者、免疫学者

産業界への就職を希望する学術研究機関の科学者は、産業界のものの考え方に慣れる必要がある。それは履歴書を正しく書くことから始まる。製薬会社の職に応募するときに、大学の助教の職に応募するときと同じ履歴書を提出する研究者をしばしば見てきたが、それでは絶対に採用されない。履歴書を50通送ったが返事が来ないという人は、自分のアプローチを考え直す必要がある。

学者がやりがちな最大の間違いの1つは、自分の業績の全てを列挙することだ。私は17、18ページもある履歴書を見たことがあるが、そんなものは全く必要ない。論文を多数出版しているなら、その点に触れるのは構わないが、重要なものを4、5本挙げるだけにしておこう。

企業は、あなたの論文やポスター発表には関心を持っていない。あなたがチームの中で結果を出すことができる人かどうかを知りたいのだ。他の応募者と差をつけたいなら、論文の被引用数ではなく協力経験を強調しよう。例えば、あなたは何かの委員会のメンバーになったことはないだろうか? 学会やジャーナルクラブ(抄読会)を組織したことはないだろうか? 研究室の外で、イニシアチブや協調性の高さがよく分かる活動をしていないだろうか? あれば、それを履歴書の最初に書くのだ。

なお、産業界では結果が全てなので、その成果はしっかりアピールしよう。学会を組織したと言うだけでは足りない。世界各地から20人の講演者が集まり、大成功に終わった学会を組織したと言うのだ。あなたが自身の成功についてはっきりと語らなかったら、面接官は、あなたが全てを台無しにしたのではないかと疑うかもしれない。

面接対策は万全に

良い履歴書があれば、面接にこぎ着けるのは簡単だ。けれども、産業界での経験がないことを理由とする不採用通知を受け取ったら、面接でヘマをしたと考えてよい。最も可能性が高いのは、あなたの履歴書は悪くなかったが、実際に会ってみると、産業界で働くことについて何も分かっていないように見えたということだ。

面接に備えるには手間がかかる。単に面接官の所に行って、自分は社交的で物覚えも早い人間だとアドリブの芝居のようなアピールをしてくるだけでは足りない。他の応募者も同じようなことを言うからだ。業界の考え方に慣れておくために、面接の前に、その仕事に就いている人か経験者と話をしておくべきだ。仕事のリアリティーは全く違ってくる。あなたがその仕事を得るために実際に投資していることを、面接官に分からせるのだ。

イニシアチブを取ろうPHILIPP KRUGERオックスフォード大学キャリア・アウトリーチ・フェロー、免疫学者

もしあなたが指示されたことをしているだけなら、科学の世界で成功する可能性はない。あなた自身が、将来のキャリアのために準備を始める必要があるからだ。しかし、研究者はしばしば博士課程を3~4年やってからようやく、自分はこれからどうなるのかと考え始める。

あなたに必要なのは、イニシアチブを取ることだ。学生やポスドクに声を掛け、学部でキャリアセミナーを開く相談をしよう。委員会のメンバーになろう。イベントを組織しよう。スポンサー探しを手伝おう。こうした活動を通じてできた人脈は、あなたの将来の選択肢を大きく広げてくれるだろう。それに多くを学ぶこともできる。例えば予算の管理をしたことがない人は、前述のような活動の中でそれを経験することで、今後の仕事において自分にそれができるかどうかを知ることができるだろう。

指導教員がこうした活動を支援してくれるならよいが、支援が得られない場合は、その上の人と交渉してみよう。学部長や助成金提供機関にアプローチするのだ。このレベルの人々はキャリア開発に協力的であることが多い。

こうした活動には時間を取られるだろうが、費やした時間と収穫は相関する。将来につながらない作業のために研究室でどれだけの時間を過ごしているかを考えてみるとよい。会合に数時間出ても研究に支障が出ることはない。あなたのいる所では、研究室の外での活動が評価されないのなら、その文化を変えることにもなるのだ。

自分自身を知ろうIRINI TOPALIDOUワシントン大学に所属する分子生物学者

科学者はしばしば、この道しかないと思い込んでいる。私は不幸な若手主任研究者を大勢見てきた。彼らは自動的にその地位に上がり、他の選択肢はなかったと感じているが、自分が何をしたくて、何が得意かを分かっていれば、自分を生かせる仕事を見つけることができる。

自分が本当に実験が好きかどうか分からないなら、その仕事を3カ月間試してみるとよい。研究室の仕事を心から楽しめないなら、失敗により容易に挫折してしまう恐れがある。人との会話からもたくさん学ぶことができる。あなたの懸念に耳を傾け、特定の道を押しつけることなく助言してくれる人を見つけよう。

そして、研究室を主宰することを考える前に、自問自答すべき重要な問題がある。それは「自分には良い指導者となるのに必要な資質があるか」だ。人を指導するのが得意でない人や、自分のチームのことよりも自分の実験のことの方が気になる人は、これまでのやり方を劇的に変えない限り指導者になるべきではない。もっと多くの科学者が自分のことをよく知るようになれば、ひどい指導者が減り、システム全体も良くなるのだが。

リサーチ・サイエンティストとして実質的なリーダーに

山のような管理義務を背負うことなく研究室を運営したいと考える人は、リサーチ・サイエンティストになることを検討してみるといい。リサーチ・サイエンティストは教授になれなかった研究者のための代替ポジションではない。絶対に違う。私は非常に野心的な人間であり、部屋に閉じこもるような仕事はしたくなかったのでリサーチ・サイエンティストになった。私はリサーチ・サイエンティストとして研究室の実質的なリーダーになることもできる。

リサーチ・サイエンティストという職は、やりがいの有無も安定性もさまざまだ。あなたを本当に必要としている研究室を見つけよう。研究室の立ち上げを手伝ってくれる人を求めている、経験の少ない主任研究者の所などがいいだろう。あるいは、学会に出るので忙しく、研究室の日々のニーズに応えられない年配の研究者の所もいいかもしれない。あなたが自分を価値ある人間にすることができれば、他人からも認めてもらえるのだ。

発展途上国の科学者と交流しようMIRJANA POVICエチオピア宇宙科学技術研究所に所属する天体物理学者

もっと大勢の科学者が、その経験と知識を発展途上国に分け与えることを考えるべきだ。私たちの専門知識は、エチオピアをはじめとするアフリカ、アジア、南米の国々で大いに役に立つからだ。こちら側にも恩恵はある。私たちは、日常の決まり切った仕事や快適な地域の外に出ることで、人間的にも専門家としても大きく成長することができる。馴染みのない条件に適応するときには多くを学ぶことができる。全く違ったものの見方をする修士課程や博士課程の学生を指導することで、新しい角度から問題に取り組めるようになる。

私はセルビア生まれだが、アフリカに移住した。アフリカにも多くの優秀な科学者がいて、共同研究を歓迎している。同僚の中には、欧州で仕事をしながら講義をするためにアフリカに来る人も多い。遠隔地から学生を指導したり講義をしたりする人もいる。

発展途上国の科学者と交流するにはどこから始めればよいか? あなたの専門分野の研究者で、発展途上国で仕事をしている人に接触してみよう。私も、研究や協力の機会について助言や情報を求められれば喜んで応じる。天文学者なら国際天文学連合に接触するのもよい。他の科学分野にも、進むべき方向を案内してくれる同様の組織がある。

アフリカでの生活は容易ではない。停電もあるし、インターネット環境も不安定で、データのダウンロードに数日かかることもある。けれども科学者は、環境に適応して仕事をする方法を見つけ出すことができる。私たちは新しいやり方を学び、自分でも気付かなかった忍耐力を発見する。それは人生の多くの場面で役に立つ。

他の専門家に助けを求めようANDY KAH PING TAYスタンフォード大学に所属する医用生体工学者

私は博士課程学生の時に、最初からトラブルを回避しておけば、トラブルシューティングに要する多大な時間や手間を省けることを知った。新しい技術を試すときには多くの問題が生じ得る。プロトコルには重要な詳細が欠けているかもしれない。例えば、顕微鏡の準備はどうすればよいか? 試料は画像撮影のいつセットすればよいのか? 安い試薬を使うことで費用を節約できないか?

私は、プロトコルに不明な点があったら、多分こういうことだろうなどと憶測せず、技術を試す前に対処する。その技術に関する論文を出版した研究者にメールを送るのだ。連絡する相手は、多忙であることが多い責任著者ではなく、もっと若い筆頭著者だ。

他の専門家に助けを求めるのは当然のことと思うだろう。だが、私が実際にそれを行っていることを知って驚く人は多い。彼らは私に「考えを盗もうとする人がいるかもしれない」と警告してくれるが、私は心配していない。多くの研究者は、他の研究者が自分の技術を再現し、結果を実証しようとしていると聞けば、うれしく思うものだ。プロトコルに不明な点があって途中で間違えてしまったら、彼らの結果を実証できなくなってしまう。

(翻訳:三枝小夜子)

インタビュアーはChris Woolston。フリーランスライター。A love–hurt relationship(2018年3月号「好き過ぎてつらい博士課程」)を執筆。

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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