Editorial

元素周期表150周年

Nature ダイジェスト Vol. 16 No. 4 | doi : 10.1038/ndigest.2019.190438

原文:Nature (2019-01-31) | doi: 10.1038/d41586-019-00281-z | Anniversary celebrations are due for Mendeleev’s periodic table

メンデレーエフが最初の周期表を発表してから150周年となる2019年は、化学の過去を振り返るとともに化学の未来に思いをはせる意義深い1年だ。

メンデレーエフが1869年に発表した周期律。 現在目にする周期表とは縦と横が異なっている。 | 拡大する

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1869年にドミトリ・メンデレーエフ(Dmitri Mendeleev)が発表した化学元素の周期律は、一見したところ、現在の周期表にあまり似ていない。しかし、メンデレーエフは、元素を原子量順に縦に並べたものを何列かに分けて記載し、特性が類似したものが横に並ぶように表示しており、今日知られている象徴的な元素の配置の基礎は出来上がっていた。国連は、メンデレーエフのこの功績から150周年に当たることを顕彰するために2019年を国際周期表年として宣言した(ただし、現在の周期表が考案されたのは1940年代である)。Nature も、科学で恐らく最も有名な表である周期表について2019年1月31日号で特集を組み、150周年を祝った。

ドミトリ・メンデレーエフ。 | 拡大する

Sovfoto/Universal Images Group/Getty

メンデレーエフの名は、周期表の作成者として知られているが、元素を意味のある表にまとめて、物理的性質または化学的性質に基づいて反復するパターンを持たせようと試みたのは、彼が最初ではなかった。1862年に元素の周期性を発見したのは、フランスの地質学者ベギエ・ド・シャンクルトア(Alexandre-Émile Béguyer de Chancourtois)であり、彼は、円筒状の紙に元素を原子量順にらせん状に並べて、似た性質の元素が垂直方向に並ぶことを明らかにしたのだった。この他にも、英国の化学者ジョン・ニューランズ(John Newlands)とドイツの化学者ユリウス・ロータル・マイヤー(Julius Lothar Meyer)が、メンデレーエフより先にそれぞれ独自の周期表を発表していた。ところが、ガリウム、スカンジウム、ゲルマニウムが発見されてメンデレーエフの当初の周期表の空白が埋まると、状況は変わった。この周期表に、「新元素の予測ツール」としての力があることが確かめられたのと同時に、それが単なる化学物質のカタログ以上の存在であることが証明されたことで、メンデレーエフの周期律は科学コミュニティーで幅広い関心を集めることとなったのだ。

現在の周期表には、118種類の確定した元素が、原子番号(元素の原子核に存在する陽子の個数)の順にきちんと並べられている。そして元素の特性に周期性があること、すなわち周期表の基本的な形は、それぞれの元素の原子において、電子が離散的なエネルギー準位をどのように占めているかに由来している。電子と陽子の発見と原子の構造の解明が、メンデレーエフの周期表よりかなり後だったことを考えれば、メンデレーエフの功績は、いっそう感銘深い。

周期表には、これまでに明らかになった物質を作る基本単位が全部記載されているだけでなく、今後発見される基本単位の枠組みも示されている。最近周期表に加えられた元素(ニホニウム、モスコビウム、テネシン、オガネソンの4つの人工元素)は、2016年に正式承認され、ようやく7段目の空白部分が埋まった。これで、メンデレーエフの傑作は完成したと思われるかもしれないが、新たな8段目の最初の元素となる119番元素の探索に理化学研究所仁科加速器科学研究センターなどの研究機関が取り組んでいる。センター長である延與秀人は、119番元素と120番元素が5年以内に発見されるという予測を2017年に発表しており、その時が迫っている。その一方で、既知の超重元素の研究によっても周期表が書き換わる可能性がある(Nature 2019年1月31日号552ページ参照)。

また、多くの周期表が、教材として教室の壁に掲示され、研究に役立つ資料として化学の教科書の表紙裏に印刷してある。周期表は、基本的には単なる参考資料であり、例えば、硫黄の原子量や覚えにくい元素記号を調べることなどができる。アンチモンやタングステンの元素記号をちゃんと思い出せるだろうか。しかし、周期表の歴史と発展だけでなく、周期表によって永久に伝えられることとなった人々や場所をもう少し詳しく調べてみれば、科学が過去150年間に社会と密接なつながりを持つに至るまでの興味深い物語が見えてくる(18ページ「周期表の発展を支えた女性科学者たちの物語」参照)。

周期表は、我々の文化の多くの側面に浸透しており、例えば、作家であり化学者でもあるプリーモ・レーヴィ(Primo Levi)の著作物(Nature 2019年1月31日号564ページ)や、シンガーソングライターのトム・レーラー(Tom Lehrer)による替え歌(「The Elements」)などがある。この歌は、2016年にヘレン・アーニー(Helen Arney)が新しい4元素を組み込んだ改訂版を発表した。また、周期表は、各種アルコール飲料からゾンビを倒す武器に至るまで、さまざまなものを分類するために広く借用、改変、利用されてきた。

大衆文化へ移行する過程で科学的基礎がやや失われてしまった感があるが、周期表には、より多くの人々の間で共感を呼ぶ何かが存在していることは明白だ。この「150周年」の年に、化学者は、周期表の魅力をうまく活用し、宇宙に存在する物質を作る既知の基本単位を全て集めて系統立てて並べた、今でも最高の「元祖」の周期表の重要性をはっきりと示すべきだ。

(翻訳:菊川要)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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