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ニューホライズンズが見た太陽系「最遠の天体」

Nature ダイジェスト Vol. 16 No. 4 | doi : 10.1038/ndigest.2019.190413

原文:Nature (2019-01-02) | doi: 10.1038/d41586-019-00006-2 | Cosmic collision created ‘snowman’ MU69

Alexandra Witze

NASAの探査機ニューホライズンズが、これまでで最も遠いカイパーベルト天体「ウルティマ・トゥーレ」の探査を行った。

「ウルティマ・トゥーレ」は2つの丸い部分からなる「接触型」の二重小惑星だ。 | 拡大する

NASA/JHUAPL/SWRI

雪だるまだ! 米航空宇宙局(NASA)の探査機ニューホライズンズが宇宙探査史上最も遠いカイパーベルト天体「2014 MU69」へのフライバイ(接近通過)を成功させ、最初の画像の一部が公開された。その天体は、2個の丸い部分からなる非対称な形をしているように見えた(訳註:当初の発表では、MU69は大小2つの球体が結合した「雪だるま」のような形をしているとされていたが、2019年2月上旬の発表で、大きい方は「巨大なパンケーキ」のように平べったく、小さい方は「へこんだクルミ」のような形であると訂正された)。

ニューホライズンズは、1月1日にMU69のクローズアップ写真を撮影した後、この天体の上空わずか3500kmのところを猛スピードで駆け抜けた。MU69は、2つの天体が穏やかに結合してできた「接触型」の二重小惑星である。

ジョンズホプキンス大学(米国メリーランド州ボルティモア)の惑星科学者Sarah Hörstは「本当にクールです。つまらない天体だったら、という心配は、杞憂に終わりました」と言う。

接触型の二重小惑星は、大きさが同程度の2つの天体が非常に穏やかに接触して、そのまま結合したものである。2014年から2016年にかけて欧州宇宙機関(ESA)の彗星探査機ロゼッタが探査を行った67P/チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は、ゴム製のアヒルのおもちゃのような形をしているが、これも同じようにしてできたと考えられている。

MU69の長さは31kmで、幅は最も広い所で19kmだ。結合部分は、他の部分より明るい色の物質にぐるりと囲まれているのが見てとれる。これは、結合部分の物質の化学組成か粒子の大きさが、他の部分とは異なっていることを意味しているのかもしれない。小さい粒子は大きい粒子よりも反射率が高いのだ。

フライバイの間に収集されたデータは、MU69が科学者の予想どおり赤黒い色をしていることを裏付けていた。研究チームのメンバーであるサウスウェスト研究所(米国コロラド州ボールダー)の惑星科学者Carly Howettは、恐らくこの色はMU69の凍った表面に数十億年にわたって日光が当たり続けた結果であろうと言う。表面の最も明るい部分の反射率が約13%であるのに対し、最も暗い部分の反射率は約6%で、鉢植え用の土のように黒い。

NASAエイムズ研究センター(米国カリフォルニア州モフェットフィールド)の惑星地質学者Jeff Mooreによると、ニューホライズンズのチームは現時点ではMU69の表面に衝突クレーターを発見していないが、今もニューホライズンズから高解像度画像を受信中であるため、そこに写っているかもしれないという(訳註:2月下旬に発表された高解像度画像では、くぼみがいくつも見えてきたものの、それが衝突クレーターなのか、昇華や崩壊、あるいはその他の原因によってできたくぼみなのかはまだ分からないという)。

MU69は地球から約65億kmの彼方にあるカイパーベルト天体(海王星より外側の軌道を公転する太陽系外縁天体が円盤状に密集した領域をカイパーベルトと呼び、そこにある天体のこと)で、これまでに科学者が探査した天体の中では最も遠い所にある。ちなみにニューホライズンズが最初に訪れたカイパーベルト天体は、2015年7月にフライバイを行った冥王星だ。

しかしMU69は、「冷たい古典的カイパーベルト」として知られる軌道傾斜角の小さい天体が集まる領域にある点で特別だ。この領域にある天体は、45億年以上前に太陽系が形成された時から重力による摂動を受けず、当時の状態を完全にとどめていると考えられているからだ。MU69へのフライバイが科学者たちにもたらすデータは、太陽系形成最初期の名残の数々を直接見せてくれることになるだろう。

クイーンズ大学ベルファスト校(英国)の惑星天文学者Michele Bannisterは、「MU69は完璧な接触二重小惑星です。数千もの冷たい古典的カイパーベルト天体の中から、偶然にも素晴らしい選択をしたのです」と言う。

この天体は恐らく、無数の小さな粒子があちこちで渦を巻いて集まりながら徐々に大きな塊になり、そのうちの2つが合体して現在私たちが目にしている形になったのだろうと、Mooreは言う。「これらは惑星の基本的な構成ブロックのわずかな残りなのです」。

ニューホライズンズの科学者たちは、MU69の最初のクローズアップ画像の受信を祝っている時にも、ウルティマ・トゥーレ(Ultima Thule)というニックネームを巡って激しい批判にさらされていた。ラテン語で「既知の世界の向こう」という意味で、北極地方や探検との関連でよく使われるが、2018年3月に公募の中から選ばれた際にNewsweek が「ナチスもアーリア人の神話的な祖国をそう呼んでいた」と指摘した記事が、翌年1月1日にリツイートされ、ナチスとの関連に注目が集まってしまった。これに対し、ミッションの主任研究者であるサウスウェスト研究所の惑星科学者Alan Sternは、はるか彼方の土地を意味する言葉として何世紀も前から使われてきたものであり、「だから私たちはこの名前を選んだのです」と反論している。

(翻訳:三枝小夜子)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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