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カンブリア爆発より古い動物の這い跡

Nature ダイジェスト Vol. 16 No. 12 | doi : 10.1038/ndigest.2019.191214

原文:Nature (2019-09-05) | doi: 10.1038/d41586-019-02556-x | Ancient worm fossil rolls back origins of animal life

Colin Barras

動物は「カンブリア爆発」で急激に多様化したとする説に、先カンブリア時代の動物の化石が疑問を投げ掛けた。

Yilingia spiciformisの化石と、その這い跡。 | 拡大する

Z. CHEN ET AL./NATURE

先カンブリア時代のエディアカラ紀末期に当たる5億5100万〜5億3900万年前のこと。蠕虫様の奇妙な動物が、泥の積もった海底を這って移動している最中に死んだ。その動物の体と這い跡は、そのままの状態で残され、長い時を経て化石化した。そして今、それらの化石は、動物がいつどのように進化したかを再検討するための手掛かりとなってくれる。地球上の動物は、約5億3900万年前に始まったカンブリア爆発と呼ばれる事象で爆発的に進化し多様化したと考えられているが、現在この説に対して疑問を投げ掛ける証拠が徐々に増えてきており、そこにまた1つ、今回の化石が加わったわけである。中国湖北省の夷陵(Yiling)区で見つかったエディアカラ紀のこの化石は、Yilingia spiciformisと名付けられ、解析結果と共にNature 9月19日号で報告された(Z. Chen et al. Nature https://doi.org/10.1038/s41586-019-1522-7; 2019)。

「この発見により、動物の爆発的多様化の時期はエディアカラ紀までさかのぼることが、いっそう濃厚になりました」と、エディンバラ大学(英国)の地球科学者Rachel Woodは話す。もはやカンブリア爆発が地球の生命史において劇的な出来事だったとは思えないと、彼女は言う(2016年5月号「カンブリア爆発の『火種』」参照)。

岩石の記録から、エディアカラ紀の海が生命に満ちていたことはすでに明らかになっているが、この年代の化石の多くは、現在の生物とは異なる奇妙な構造的特徴を持っている。そのため古生物学者らは、エディアカラ紀の生物と古生代初期のカンブリア紀の動物をなかなか関係付けることができなかった。そこで、カンブリア爆発の際に現在見られるような種類の動物が劇的に出現したとする見方が強まった。

しかし、見解は変わり始めている。一部のエディアカラ紀生物は、風変わりな構造ではあるが動物だと認定されており、このことから考えて、動物の多様化はカンブリア爆発の数百万年前に始まったと見られる(I. Bobrovskiy et al. Science 361, 1246–1249; 2018およびNature ダイジェスト 2018年12月号「パンケーキ形の奇妙な化石は最古の動物だった」参照)。

Yilingia spiciformisは、そうした見方にうまく当てはまる存在であり、動物がカンブリア爆発以前に多様化したという説を補強するものだ。Y. spiciformisは最大で体長27cm、幅2.5cmにもなる。その体は分節していて、全長にわたって左右対称であり、明らかにカンブリア紀の動物に似た構造をしていると、この化石を見つけて分析した研究チームのメンバーであるバージニア工科大学(米国ブラックスバーグ)の古生物学者Shuhai Xiaoは話す。

「かつて生物学者らは、エディアカラ紀とカンブリア紀の違いを重要視しました」とXiaoは話す。「しかし考えてみると、生物はこの2つの時代の境界を生き抜かねばなりませんでした。一部の系統は生き残ったに違いありません」。

(翻訳:船田晶子)

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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