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超多剤耐性結核の新しい治療法が米国政府の承認を取得

Nature ダイジェスト Vol. 16 No. 10 | doi : 10.1038/ndigest.2019.191002

原文:Nature (2019-08-14) | doi: 10.1038/d41586-019-02464-0 | Treatment for extreme drug-resistant tuberculosis wins US government approval

Amy Maxmen

新薬と2つの既存の薬剤を併用した薬物療法の臨床試験で、最も死亡率が高いタイプの結核患者の90%が治癒に至った。

南アフリカ共和国の病院に入院しているXDR TBの患者。 | 拡大する

PIETER BAUERMEISTER/AFP/Getty Images

米国食品医薬品局(FDA)は2019年8月14日、広範な抗結核薬に治療抵抗性を示す多剤耐性結核を治療するための新薬を、既存の2種類の薬剤と併用するレジメンにて承認した。この薬物療法の臨床試験では、6カ月間この治療を受けた超多剤耐性結核(XDR TB)患者の90%近くが治癒に至った。XDR TBに対して現在行われている薬物療法の奏効率は、平均で34%程度にすぎない。

援助団体「国境なき医師団」の結核対策アドバイザーとしてニューヨーク市を拠点に活動しているSharonann Lynchは、「新しい抗結核薬の登場が切望されていますが、8月14日に承認されたXDR TBの治療レジメンは、すぐにでも患者さんを救うことができるのです。薬価を抑えることさえできれば、ですが」と話す。

薬に手が届かない

この併用療法に使われる薬剤の1つであるプレトマニド(pretomanid)は、ここ50年近くの間に全世界で新しく承認された抗結核薬としてようやく3番目のものである。製薬会社は何十年もの間、抗結核薬の開発に手をつけてこなかった。結核にかかるのは、高価な薬剤を使うことのできない最貧層の人たちが多いからだ。だが、2000年代初頭に研究者が政府からの援助や慈善家からの寄付金を受けるようになると、プレトマニドなどの新しい抗結核薬の開発が活気づいた。

この新しい治療レジメンを開発したのは、ニューヨーク市の非営利研究団体TBアライアンス(TB Alliance)だ。TBアライアンス代表のMel Spigelmanは、「薬剤耐性結核は世界中で最も問題となっている抗菌薬耐性です」と話す。しかし、治療レジメンを開発するのに十分な資金が研究者に提供されれば、薬剤耐性を克服することは可能だと彼は言う。

Lynchが指摘している通り、薬価を抑えて貧しい人たちにも使えるようにすることも重要だ。多剤耐性結核の治療薬として承認された他の2つの抗結核薬〔2012年に承認されたベダキリン(bedaquiline)と2014年に承認されたデラマニド(delamanid)〕 は、6カ月間の服薬に数百ないし数千ドル(数万~数十万円)の費用がかかる。「薬価が高いせいで、ベダキリンが効くはずの患者さんのうち、実際に治療を受けられたのは20%だけだったのです」とLynchは嘆く。

TBアライアンスは現在、治療に使われる薬剤を製造する予定の2つの製薬会社と価格の交渉を行っているところだ。ベダキリンの薬価がかなり高いことをLynchは懸念している。「この療法が1日1ドル前後に収まればいいのですが」と彼女は言う。

耐性の蔓延

世界保健機関(WHO)によれば、世界中で毎年約50万人が多剤耐性結核と診断されており、そのうち約8.5%がXDR TBである。XDR TBには通常の抗結核療法は奏効せず、患者は8種類ほどの薬剤を1年以上にもわたって併用しなければならない。しかし、こうした薬剤は難聴などの深刻な副作用を引き起こす恐れがある上に、WHOによれば今もなおXDR TB患者の約3分の2は死に至っている。

WHOの統計によれば、結核患者の総数は減少しているものの、全症例に占める薬剤耐性結核の割合は世界中で年々増加している。南アフリカ共和国では2012年に1500人以上の患者がXDR TBと診断されており、10年間で10倍もの増加を見せている1

ベダキリンとデラマニドを使えるようになったことは、結核による死亡者の激減にはまだ結び付いていない。その理由の1つに、治療費がかさむことが挙げられる。また、医師の側としても他の薬剤とどのように併用したらよいかが最初はよく分からなかったからだと、Spigelmanは言う。医師は結核をカクテル療法で治療し、特定の1つの薬剤に対する耐性を結核菌にできるだけ獲得させないよう注意を払っている。それにもかかわらずベダキリンとデラマニドは、レジメンの一部としてではなく、単剤療法を想定して承認されたのだ。

TBアライアンスは最初から、他の抗結核薬との併用療法でプレトマニドを試験した。プレトマニドが他の薬剤に先んじて併用療法に組み入れられることをSpigelmanは願っている。

(翻訳:藤山与一)

参考文献

  1. Shah, N.S. et al. N. Engl. J. Med. 376, 243–253 (2017).

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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