渡り鳥、ごちそうさま
ミシシッピ州立大学沿岸研究エクステンションセンター(米国)の漁業生物学者James Drymonはイタチザメが吐き出したものの中に羽を見つけた。彼は最初、それが不運な海鳥、おそらくカモメかペリカンのものだろうと思った。だが、彼ら研究チームがその羽のDNA塩基配列を調べたところ、驚きの結果が出た。羽はチャイロツグミモドキという陸にすむ小鳥のものだったのだ。メキシコ湾のイタチザメの胃の中に、なぜ陸鳥の羽があるのか?
Drymonらは、2010~2018年に若いイタチザメ105匹の胃の内容物を調べた。40%近くが陸にすむ鳥を直近に食べていた。サメの胃から出てきた陸鳥はしめて11種類に上った。2019年5月のEcology に報告。
サメがときどき小鳥を食べることは1960年代から知られていたが、「私たちの興味を引いたのは、この行動が広く見られることでした。毎年、多数の事例が生じているのです」とDrymonは言う。
海と陸の生態系の深いつながり
小鳥は毎年秋と春に集団でメキシコ湾を渡る。悪天候に遭遇すると、鳥たちは水上に降りることを強いられる場合があるが、これは実質上、死を意味する。「嵐に関係する事象のために命を落とす渡り鳥の数は数十億羽に上るでしょう」とDrymonは言う。サメは、年に2回空から降ってくるこのごちそうを昔から利用してきたと彼はみているが、それを確認できるようになったのはつい最近、部分的に消化された羽の持ち主を遺伝子検査で特定できるようになってからだ。
この結果は海と陸の生態系がいかに深くつながっているかを如実に示していると、マイアミ大学(米国)の海洋生態学者Neil Hammerschlagは言う。「イタチザメが、驚くべき日和見的雑食性(好都合に乗じて何でも食べる食性)であることを示しています」。
翻訳:粟木瑞穂
Nature ダイジェスト Vol. 16 No. 10
DOI: 10.1038/ndigest.2019.191005b
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