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恐竜の集団営巣行動を示す強力な証拠

Nature ダイジェスト Vol. 16 No. 10 | doi : 10.1038/ndigest.2019.191011

原文:Nature (2019-07-15) | doi: 10.1038/d41586-019-02174-7 | Ancient Mongolian nests show that dinosaurs protected their eggs

Jonathan Lambert

モンゴル南東部で獣脚類恐竜の大規模な集団営巣跡が発見され、一部の恐竜が、現在の鳥類などと同様に集団で巣を作り卵を守っていたことが示唆された。

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Masato Hattori

日本、カナダ、韓国、モンゴルからなる国際研究チームによる調査で、モンゴル・ゴビ砂漠東部の「ジャブラント層(Javkhlant Formation)」と呼ばれる後期白亜紀の地層(約8600万〜7200万年前)から、非鳥類型獣脚類恐竜のものとみられる巣の化石が狭い範囲に多数集中しているのが見つかった。タフォノミー(化石生成学)的および堆積学的な証拠に裏付けられた、獣脚類恐竜の集団営巣行動を示す今回の成果は、2019年7月5日付でGeologyに報告された1。論文著者の1人である王立ティレル古生物学博物館(カナダ・アルバータ州ドラムへラー)の古生物学者François Therrienは、「恐竜はよく、単独で行動し、巣を作って卵を埋めたら後は放っておく、というように描かれますが、今回の研究で、一部の恐竜は群れを成す傾向が強かったことが分かりました。集団で巣を作り、それを守っていたようなのです」と説明する。

2012〜2018年に行われた一連の発掘調査では、約286m2の範囲に、直径約13cmの球状の卵化石3〜30個からなる巣の痕跡が、少なくとも15個確認された。これらは鳥類より原始的な獣脚類恐竜のものとみられ、単一の古地形面上で見つかったことから、今回の発見は、集団営巣行動が非鳥類型恐竜ですでに存在したことを示す、これまでで最も明確な証拠となった。

色の異なる複数の泥岩層からなるジャブラント層。卵化石の輪郭が破線で示されている。 | 拡大する

KOHEI TANAKA/UNIV. TSUKUBA

現生の鳥類やワニ類の一部は、繁殖期に1つの場所に集まって巣を作り、卵を産む。こうした集団営巣行動を、巣を狙う捕食者への対策として最初に始めたのは恐竜だった、と考える古生物学者は少なくない。しかし、それを裏付ける決定的な証拠はこれまでなかったと、ジョンズホプキンス大学(米国メリーランド州ボルティモア)の古生物学者Amy Balanoffは言う。

1980年代以降、一箇所に集中しているように見える巣の痕跡や、それらを構成する卵の化石はいくつも発掘されている。だが、そうした化石が含まれていた岩石の年代には数千年またはそれ以上の幅があることも多く、それらの卵が同時に産み落とされたものなのか、それとも複数年にわたる産卵が同じ場所で行われた結果なのかを判断するのは難しかったと、共著者の1人であるカルガリー大学(カナダ・アルバータ州)の古生物学者Darla Zelenitskyは説明する。

今回の発見は、そうした状況を一変させるものだ。ジャブラント層は色の異なる複数の砂質泥岩層からなるが、見つかった15個の巣は、全てが淡灰色の層の上の単一の古地形面に位置していた。卵化石の中は、下部は鈍い橙色の堆積物、上部は赤色の堆積物で充塡されており、この赤色泥岩層は全ての卵化石のみならず、周辺一帯に広がって「鍵層(広域にわたって短期間に堆積した、指標となる地層)」を形成していた。この鍵層は、近隣の河川が氾濫して営巣地が堆積物で覆われた際にできたと考えられる。「卵も殻の破片も比較的そのままなので、巨大な洪水ではなかったようです」とTherrienは言う。重要なのは、この鍵層の存在によって全ての卵化石が結び付けられ、それらが単一の繁殖期に産み落とされたと示唆されることだ。「地質学的に、これは願ってもない状況です」とZelenitskyは語る。

こうした筋書きについて、Balanoffは「実に説得力があります」と言い、今回の研究は入念な分析と強力な証拠によって裏付けられていると評価する。

論文ではさらに、これらの巣の主と考えられる恐竜の正体も明かされている。卵殻の内外の微細構造と厚さ、そして以前よりこの地域周辺の地層から発見されている恐竜化石の情報から、これらの卵を産んだのは非鳥類型獣脚類のテリジノサウルス類であった可能性が高いという。

また、卵殻の特徴などからは、これらの卵が有機物に富む土壌の中に埋められて温められていた可能性も示唆された。卵の中に胚は認められず、複数の卵殻に孵化の際にできたとみられる穴があること、そして鍵層である赤色泥岩層が卵の中からも見つかっていることから、これらの卵は洪水時にはすでに孵化を終えていたと考えられる。15個の巣のうち9個で卵の孵化が確認され、この場所での営巣成功率(少なくとも1個の卵が孵化した巣の割合)は60%以上と高かったことが分かった。この成功率は、巣を守る現生の鳥類やワニ類のそれに匹敵する。

カリフォルニア州立大学(米国ロサンゼルス)の古生物学者Daniel Bartaは、営巣成功率の高さからは一部の恐竜が巣を近くで見守っていたことが示唆される、と同意する。「ですが、孵化した卵と捕食者に割られた卵が似ていることも多いため、注意が必要です」。

(翻訳:小林盛方)

参考文献

  1. K. Tanaka et al. Geology 47, 843–847 (2019).

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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