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気温の季節サイクルにも人間の影響

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 9 | doi : 10.1038/ndigest.2018.180902

原文:Nature (2018-07-19) | doi: 10.1038/d41586-018-05780-z | Humans are altering seasonal climate cycles worldwide

Jeff Tollefson

人工衛星が40年近くにわたり収集してきた全球の気温データから、人間活動による気候変動の痕跡が大気中に認められることが分かった。

北半球の夏の気温は、冬の気温より速いペースで上昇している。 | 拡大する

Mazo/LightRocket via Getty Images

数十年分の人工衛星データの分析から、低層大気中の季節サイクルが人間活動によってどのように変化しているかが明らかになった。化石燃料の燃焼で生じた温室効果ガスの蓄積により、夏の気温が上昇し、特に北半球で、年間の気温の振れ幅が大きくなっているという。

これまでの研究は、地球温暖化により地上の季節がどのように変化しているかを証明するもので、冬の雪塊が解ける時期の早まりや、動物たちの移動パターンの変化、火災シーズンの長期化などを明らかにしてきた。Science 2018年7月20日号に発表された最新の研究結果は、人工衛星が1979~2016年に測定した気温データに基づくもので、大気中の季節サイクルの変化を初めて厳密に示したものだ1。この論文によると、人工衛星の記録がある期間の温度変化の大きさを自然の気候変動によって説明できる確率は100万分の5程度であるという。

論文の筆頭著者であるローレンス・リバモア国立研究所(米国カリフォルニア州)の大気科学者Benjamin Santerは、「多くの研究者は生物学的な世界でこれらの変化を探し、発見しているので、私たちは人工衛星のデータを調べることにしました」と言う。「私たちが目にしているのは、人間が気候に影響を及ぼしていることを示す重大な証拠です。影響は年間の気温だけでなく、季節サイクルにも及んでいます」。

Santerのチームはコンピューターモデルを用い、温室効果ガスの放出がある場合とない場合について、全球の気候数千年間分をシミュレートした。これにより、人類が大気の状態に及ぼす「フィンガープリント(指紋、痕跡)」を予想することが可能になる。研究者らは次に、これらのパターンを、人工衛星が1979年以来収集してきた気温のデータと比較した。その結果、地球の気候の自然な変動では、気温の季節サイクルに見られた変化の全ては説明できないことが明らかになった。

気温の季節サイクルの長期変化傾向の中には、大気中の温室効果ガス濃度の上昇による温暖化を考慮しないと説明できないものもあった。最も大きな変化は北半球で起きていて、夏と冬の平均気温の差が約40年間で0.4度開いたことが分かった。その理由は、主として夏の気温の上昇ペースが冬よりも速いことにある。この効果は特に陸上で顕著である。恐らく、地表がますます乾燥した状態になっているためだろう。

懐疑派への一撃

テキサスA&M大学(米国カレッジステーション)の大気科学者Andrew Desslerは、今回の研究には意外性はないが、信頼できるものだと言う。「この研究により大気科学の大問題が解決されることはないでしょう。また、気候システムに関する私の考えが変わるようにも思えません。ただ、人間活動により地球の気候が変化してきていることのさらなる証拠は得られました」。

Santerは、この分析をしようと考えた理由の1つに、気候変動の原因は人間にはないと主張する気候変動懐疑派の主張に反論したいという気持ちがあったと語る。人工衛星が測定した気温のデータは、長らく科学者たちの興味と論争の的になっていた。なぜなら以前は、人工衛星の気温データが示唆する温暖化は、世界各地の地上の測候所で測定されたデータが示唆する温暖化に比べて小さかったからである。

人工衛星の測定記録と地表での測定記録との食い違いは、この20年間に科学者たちがセンサーの較正や2、人工衛星の移行や、人工衛星の軌道の時間変化に起因する誤差を補正したことで、あらかたなくなっている(2017年10月号「不適切な較正が覆い隠した海面上昇」参照)。しかしSanterによると、気候変動への対策に反対する一部の公人が、人工衛星の気温データの不適切な引用を続けているという。

Santerと数人の同僚は、2017年にScientific Reports に発表した論文3において、地球温暖化は過去20年間は頭打ちになっていると議会で証言した当時の米国環境保護庁長官、スコット・プルーイット(Scott Pruitt)の陳述に反論している。

「公共政策に関わる場面での発言で人工衛星による温度データを持ち出すのであれば、そのデータが何を語っているかを話し合いましょうよ」とSanterは言う。

(翻訳:三枝小夜子)

参考文献

  1. Santer, B. D. et al. Science 361, eaas8806 (2018).
  2. Mears, C. A. & Wentz, F. J. J. Climate 30, 7695–7718 (2017).
  3. Santer, B. D. et al. Sci. Rep. 7, 2336 (2017).

キーワード

Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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