News Feature

アジア新興勢力の研究開発投資

Credit: YMGERMAN/ISTOCK / GETTY IMAGES PLUS/GETTY

研究開発費の対GDP(国内総生産)比率が最も大きい国(地域)は、一体どこだろう? 答えは、意外に思うかもしれないが韓国だ。韓国は、GDPの4.24%もの金額を科学技術に投じている。そのすぐ後にイスラエルが続き、欧州の多くの国々や米国に大きく水をあけている。台湾の研究開発投資額も大きく、2016年には対GDP比で科学大国、日本を抜き去った。

東アジアでは、研究開発で多くの注目を集めているのは中国と日本だが(この2カ国は東アジアで最大の経済規模を誇り、科学者の数も多い)、韓国、台湾、シンガポール、香港は研究開発を強力に支援しているし、マレーシアは論文出版数が急増している。

研究開発費の対GDP比
韓国、台湾、マレーシアでは研究開発投資が急増しているが、ベースとなる金額にはばらつきがある。韓国の研究開発費がGDPに占める割合はこの20年でほぼ倍増した。台湾の研究開発費の割合もさほど遠くない水準にあり、2016年には日本を抜いた。シンガポールの研究開発費の割合は台湾とほぼ同ペースで増加してきたが、民間企業における研究開発費の減少により、近年は大きく水をあけられている。香港だけ、ほぼ横ばいである。 Credit: SOURCE : UNESCO/OECD

企業と政府の研究開発費
台湾と韓国で研究開発に投資しているのは主として民間企業であるため、基礎研究への投資の割合は低い。シンガポール、マレーシア、香港では、民間企業による研究開発への投資が全体の半分を占めるにとどまり、構成が米国や英国に近い。 Credit: SOURCE : UNESCO/OECD

科学者
東アジアで中国と日本に次いで科学者が多いのは韓国だ。マレーシアの科学者の人数は、今ではシンガポールと香港を上回っている。研究者の密度でいえば、韓国、台湾、シンガポールが際立っている。 Credit: SOURCE : UNESCO/OECD

トップ研究機関
国際的なランキングや出版統計から、香港、マレーシア、シンガポール、韓国、台湾には、世界有数の研究機関があることが分かる。そうした研究機関の多くはこの10年で相対被引用インパクトのランキングが急上昇している。Nature はこの中で科学を牽引する大学を特定するため、4500編以上の論文を2015~2017年に出版し、その論文の被引用数が世界平均より30%以上高い機関のランキングを作成した。 Credit: SOURCE: SCIVAL

女性研究者
アジアでも、世界全体と同様に女性研究者の割合は低い。しかし、マレーシアでは研究者の約半数が女性であり、国連は同国を、少女や女性の科学への参画において世界を牽引していると評価した。 Credit: SOURCES; FEMALE RESEARCHERS: UNESCO/OECD; ARTICLE OUTPUT, CITATION IMPACT: SCIVAL

論文出版数
韓国の論文出版数は飛躍的に増加していて、Scopusの2017年のデータでは約6万5000編になっている(なお、中国は41万4000編以上、日本は8万9000編)。台湾の科学者の論文が世界の論文出版数に占める割合は低下しているが、マレーシアは急増している。 Credit: SOURCES; FEMALE RESEARCHERS: UNESCO/OECD; ARTICLE OUTPUT, CITATION IMPACT: SCIVAL

相対被引用インパクト
シンガポールと香港の科学者が出版した論文の相対被引用インパクトは世界平均を大幅に上回り、米国や英国との差をさらに広げている。理由の1つに、シンガポールと香港は国際共同研究の率が非常に高く、それが被引用数の増加につながっていることが挙げられる。 Credit: SOURCES; FEMALE RESEARCHERS: UNESCO/OECD; ARTICLE OUTPUT, CITATION IMPACT: SCIVAL

翻訳:三枝小夜子

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 9

DOI: 10.1038/ndigest.2018.180920

原文

Science in East Asia — by the numbers
  • Nature (2018-06-27) | DOI: 10.1038/d41586-018-05505-2
  • Richard Van Noorden