酵母のゲノムシャッフリングがもたらす多様な未来
Credit: STEVE GSCHMEISSNER/SPL/Getty
国際イニシアチブ「酵母ゲノム合成プロジェクト」では、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)の人工ゲノムの合成が進められており1、完成すれば、動物・植物や菌類を含む「真核生物」として最初の人工ゲノムとなる(2014年6月号 「酵母の染色体1本を人工合成することに成功」参照)。大規模に再設計されたこの出芽酵母の「バージョン2.0」ゲノム(Sc2.0)には、SCRaMbLE(Synthetic Chromosome Rearrangement and Modification by Lox-P mediated Evolution;LoxPを介した進化による合成染色体の再配列と操作)という系を構成するDNA塩基配列が組み込まれている。SCRaMbLE系を使えば、大規模なゲノム再配列をオンデマンドで引き起こすことができ、遺伝的な構成や特徴がさまざまに異なるSc2.0バリアントを得ることができる。そのためSc2.0は、望ましい特性を持つ酵母を作出するに当たり、酵母を容易に改変・進化させることのできる汎用的な基盤となる2。そしてこのほど、Sc2.0が酵母を操作・理解する上で計り知れない可能性を持つことを示した計7編の論文が、Nature Communications に掲載された3–9。
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翻訳:小林盛方
Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 8
DOI: 10.1038/ndigest.2018.180831
原文
Synthetic yeast genome reveals its versatility- Nature (2018-05-31) | DOI: 10.1038/d41586-018-05164-3
- Jee Loon Foo & Matthew Wook Chang
- Jee Loon Foo & Matthew Wook Changは、シンガポール国立大学に所属。
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