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はやぶさ2が小惑星リュウグウに到着!

Nature ダイジェスト Vol. 15 No. 8 | doi : 10.1038/ndigest.2018.180802

原文:Nature (2018-06-28) | doi: 10.1038/d41586-018-05544-9 | Daring Japanese mission reaches unexplored asteroid Ryugu

Davide Castelvecchi

今後は小惑星の表面に4機の着陸機を送り込み、自らもタッチダウンして試料採取を行う予定だ。

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JAXA

2014年12月に打ち上げられた日本の小惑星探査機「はやぶさ2」が、当初の予定通り3年半かけて、2018年6月27日、ついに目的地である小惑星「リュウグウ」の上空20kmの地点に到着した。はやぶさ2は年内にも小惑星の表面に4機の着陸機を投下し、2020年には貴重な試料を地球の研究室に持ち帰る予定だ。すでに惑星科学者たちは、謎の多いリュウグウの姿を、これまでで最も近い距離から眺めている。

リュウグウは、地球と火星の公転軌道の間の軌道を公転する地球近傍小惑星だ。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2018年6月19日に、約300kmの距離から撮影した粒子の粗い画像を発表し、ごく一般的だがほとんど研究されていないタイプの小惑星リュウグウが、コマのような形をしていることを明らかにした。続いて6月25日には、40kmの距離からもっと詳細な画像が撮影され、リュウグウの表面が大きな岩塊に覆われていることが明らかになった。同日、JAXAの「はやぶさ2」プロジェクトマネジャーである津田雄一は、「当初遠方からは丸く見えたリュウグウは次第に四角に転じ、さらに近づくにつれホタル石のような美しい形と感じました」というコメントを発表した(ホタル石はフッ化カルシウムからなる鉱物で、結晶は正六面体や正八面体のものが多い)。

はやぶさ2は、小惑星探査機「はやぶさ」(小惑星イトカワを2005年から探査し、2010年に世界で初めて地球に小惑星の試料を持ち帰った)のクローンに近い後継機だ。リュウグウの直径は約1kmで、イトカワの約3倍の大きさだが、2014~2016年まで欧州宇宙機関(ESA)の探査機ロゼッタが探査を行った67P/チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星と比較すると、4分の1の大きさしかない。

リュウグウはC型小惑星であり、表面の色がイトカワに比べて黒っぽい。C型小惑星の探査としては、1997年にNASAのニアー・シューメーカー(NEAR Shoemaker)ミッションで、小惑星マティルドに接近して観測したのが最初だが、このとき探査機と小惑星は1000km以上離れていた。NASAのゴダード宇宙飛行センター(米国メリーランド州グリーンベルト)の惑星科学者Lucy McFaddenは、ここまでC型小惑星に接近したのは、はやぶさ2が初めてだと語る。

「C型小惑星についてはあまりよく分かっていません」とMcFaddenは言うが、初期の太陽系と同様の組成を持つのではないかと予想されている。はやぶさ2は、リュウグウの表面が黒っぽいのは炭素を豊富に含んでいるためなのか(しばしばそのように推定されている)、あるいは磁鉄鉱のような小さな金属粒子によるものなのかを明らかにすることになる。

リュウグウの岩石の化学分析と同位体分析は、はやぶさ2の着陸機が現地で行うだけでなく、はやぶさ2が試料を持ち帰った後に地球の実験室でも行われる。分析の結果は、地球の起源、特に地球の水の起源を説明するのに役立つかもしれない。多くの研究者は、地球の海洋は大量の水を持つ小惑星や彗星が多数衝突したことで形成されたと考えているからだ。

はやぶさ2が最初に行った観測の1つはリュウグウの自転周期の測定で、約7.5時間であることが分かった。JAXA宇宙科学研究所(神奈川県相模原市)の吉川真ミッションマネジャーは、これは良い知らせだと言う。自転速度がもっと速かったら、表面に接近しにくくなるからだ。彼にとって最も意外だったのはリュウグウの形だった。リュウグウは赤道の周りが膨らんでいるが、これは普通、もっと自転速度が速い天体で見られる特徴なのだという。

はやぶさ2の現時点での最も重要な仕事は、レーザー距離測定法を使って自分自身の位置を正確に知り、その情報に従って動けるようになることだ。「探査機から小惑星までの距離を厳密に知りたいのです」と吉川は言う。搭載したカメラと赤外分光計を使って小惑星の表面の地図を作ることも重要だ。また、温度の変動は表面の組成のヒントになる。こうしたデータは、はやぶさ2に搭載された靴箱サイズの小型着陸機「MASCOT」と3機の小型ローバーを搭載した「MINERVA-II」をどこに降ろして調査を行わせるかを決める上で重要だ。

ドイツ航空宇宙センター(ケルン)のMASCOTペイロードマネージャーであるStephan Ulamecは、「私たちは母船から得た情報を使って着陸地点を選定します」と言う。彼は、ロゼッタが67P/チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の表面に投下した着陸機フィラエのプロジェクトマネージャーを務めた人物だ。このとき、ロゼッタは彗星の周りを公転していたため、放出されたフィラエはらせんを描きながら降下する必要があり、表面に着陸するまでに数時間かかった。

一方、はやぶさ2はリュウグウの上空の一点に浮かんだ状態(小惑星の引力に対抗するため、穏やかなイオンエンジンを使ってホバリングしている)でMASCOTを切り離すため、MASCOTはまっすぐ下に落ちてゆく。MASCOTのリュウグウへの投下は9~10月になる予定だ。投下されたMASCOTがバウンド後に表面で静止すると、内部機構によって正しい姿勢に起き直り、搭載された装置で観測を行い、はやぶさ2と通信する。

MASCOTは太陽電池パネルを備えておらず、電池は着陸後15時間程度で尽きてしまう。チームは8月中旬にフランスのトゥールーズで会合を行い、MASCOTと仲間たちの着陸場所を最終的に決定する予定だ。

はやぶさ2自体も、短時間のソフトランディング(タッチダウン)を3回行って、小惑星の表面から試料採取する。その後、2019年末に、1年かけて地球に戻る旅に出る。はやぶさ2のミッション全体の中で、リュウグウまでの旅のリスクは、小惑星表面への着陸という大胆な操作に比べれば低いと吉川は言う。それでも彼のチームは、リュウグウに到着する前からギアをトップに入れていた。「あまり寝ていません」と吉川は語った。

(翻訳:三枝小夜子)

JAXA宇宙科学研究所(ISAS)准教授 Elizabeth Taskerによる「はやぶさ2」計画の解説記事は、下記からご覧いただけます。
Nature Astronomy 2018年6月1日掲載「太陽系の過去のピースを 持ち帰る」

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Nature ダイジェスト Online edition: ISSN 2424-0702 Print edition: ISSN 2189-7778

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